第三百九十九話
無心でサイコミュを製造してなんとか70%ほどまで回復させ、途中で思いついたサイコミュ同士をリンクさせる方法を試した結果、システムが向上し、実質100%に到達した。
というわけでこの世界のハマーン・カーンを探し出すことにしたのだが――
「ふむ、思ったより簡単に見つけることができたな」
なぜならハマーン・カーンはどうやら艦隊を率いてサイド3から月へと移動中だからだ。
集団で行動していると見つけ出すのは手間が掛かるがコロニーと船一隻とでは密度はともかく、人数は少ないので探る手間は大きく減る。
……それにしても……
「旗艦であるグワダンじゃないのか」
前の世界ではミネバ・ラオ・ザビと宰相であるハマーンの旗艦として亡きドズル・ザビのグワジンをモデルとしながらドロス級のような空母能力を併せ持つように建造されたグワダンだったはずだが、この世界では違うのだろうか。
まぁ今乗っているグワンバンはグワジン級の正統後継機で、地球圏に帰還したのならグワダンの強みの長距離巡航性能も不要で、火力面ではグワンバンの方が優れているのだから不自然はないが……割りと物に思い入れが強いハマーンが簡単に乗り換えるとは思えないのだが。
「それはともかく、早速通信を入れてみるか。ハマーン、わかっているな」
「ええ、私は今回は観察に努めます!」
いきなりハマーンとハマーンが顔合わせなんて話がこじれるのは間違いない。
「でも……この気配……本当に私なのかなぁ?いくらアレンがいなくて心の支えが脆いにしてもこれほど刺々しいなんて……」
確かに随分荒んでいる。だが、必死に生きようと足掻いた証だ。実に素晴らしい。
私は好きなことをして生きているし、ハマーンはなんだかんだと私に(武力的に)寄り掛かることで余計な煩わしさを除外してきた。つまり、正しく組織を運用してきたとはとても言えず、苦労が足りていない。
目の前にいるハマーンは私という温室で育ち、この世界のハマーンは1人野生で傷つきながらも逞しく生きてきたという感じか。
「むぅ」
「そう剥れるな。わかっているだろ?」
「ええ……この世界のハマーンは間違いなく負のニュータイプね」
負の感情を刺激して覚醒、強化するニュータイプだから、負のニュータイプ、か。言い得て妙だな。
となると私が手掛けているニュータイプの素質がある者の感覚を伸ばして強化したニュータイプは正のニュータイプということか。今度からこの呼び方を採用するか……まぁ私の訓練は負の感情を抱きやすいので実際は中庸あたりかもしれないが。
「つまり、質そのものはともかく、方向性が好まない……どうやらフラナガン機関が関わっているのは間違いないな」
「まぁアレンがいなかったら自然とそうなるでしょうね。この世界の私もキュベレイに乗ってるみたいだし、元になったシュネー・ヴァイスだってフラナガン機関のものだしね」
「全く、どこの世界でもニュータイプ研究所というのは好かんな」