第四百三話
「それである程度私達のことは知れたと思うがどうだ」
「……しばし待て、あまりに多い情報量で混乱している」
アレンは言われた通り待つ、がただただ無駄に時間を過ごすわけもなく、アレン人形の意識を薄くしてミソロギア内での執務にリソースを割いた。
類似性はあるものの未知であるこの世界の情報収集を怠るわけもなく、次々とデータベースを埋めていく。
その情報は軍事機密から小麦粉の値段まで様々で、さすがのアレンでも全てを把握することは難しいしシステムで絞り込んでも膨大な情報なので忙しくとも時間を作り、頭に入れるようにしている上に、睡眠中ですら脳内に叩き込んでいる。
ちなみにアレンほどではないがハマーンやジャミトフ、カミーユ、上位ナンバーのような指揮官クラスも同じような状態だ。
前の世界と違って繋がりがないというのは想像以上に孤独であり、何より争い事に発展した場合、歯止めが効かなくなり何処までも争い続けることになりかねないとの判断だ。
「ふう、もう大丈夫だ」
「それはよかった。感想を聞こうか」
「随分そちらの私はアレン代表に懐いているようだな。それにあの様子だとこちらの世界にも来ているのだろう?」
ミソロギアという組織を認め、アレンがトップであることを確認したため代表と呼ぶこととし、自身と同一体と呼べる存在について言及する。
ハマーンが得た情報は具体的な研究内容や開発したMSの詳細、ミソロギアの内部構造などを除いたもので、ダイジェストした部分もあるが最後はこちらの世界に来る前の決戦終盤で締めくくっている。
当然アレンと親密な関係であるハマーンの情報が渡っていても不思議ではない。
「ああ、ミソロギアで指揮をしている。ただ、閣下と顔合わせするのは慎重にした方がいいだろう」
「……そうだな。正直受け入れるのに時間がかかりそうだ」
異なる自分。
それが自分自身とさほど差がない人生を歩んでいたなら同族嫌悪以外は注意することは少ない。
しかし、似た人生であっても歩んだ道が違い、たどり着いた先がジャングルと砂漠ほどの違いならどう思うか。よほど達観した人物でなければ思う所がないなどということはないだろう。特に過酷な人生を歩んできた人間にとっては。
「さて、これで話し合う土台はできたと考えていいな」
「随分強引な土台作りだったが、な」
「とはいえ、こんな常識外れなものに土台を作るとなると多少強引でないと時間を無駄に消費するだけだ」
「そのとおりだ」