第四百四話
一方的ではあるが情報共有できたことで少なくとも現在は敵ではないことは確認ができたため、話は順調に進み出す。
「そちらの求めるものは空気、食料、水、金属あたりか」
「100年は無補給で問題ないが、その4つはあればあるだけ助かるのは何処も同じだからな」
とアレンは言うが、実際はレナス全機ロストした影響で一部レアメタルの備蓄が心許ないことを隠しつつ頷く。
実際、空気、水、食料、資源……特に金属類はいくらあっても満たされるということはない。地球圏にいるならなおのこと。
「後は一年戦争時代の特殊機体や試作機の設計図、もしくは現物が欲しい。特に一部でしか報告されていないリユース・サイコ・デバイスというものが気になる」
一年戦争時代はMSの黎明期であり、ジオン公国では少ない国力をMSの開発に注ぎ込んでいただけあって数々のMS、付随してMAが開発されていた。しかし、アレンが正真正銘の子供であったことやアクシズが辺境だったこと、機密保持のために半独立状態で研究、開発している部署もあり、ジオン軍本部にまで報告が上がらないものまであった。
そして、その手の情報はこの世界のネオ・ジオンは前の世界のネオ・ジオンよりも多く集まっていた。
それはアレンの存在の有無が大きくある。
半独立状態で開発研究していた者達はそれぞれがジオン残党として活動していて、まとまりに欠けながらも横並びになり存続していた。
しかし、アレンの影響が強く出ていたアクシズ、ネオ・ジオンはジオン残党にとってはあまり印象が良いものではなかった。なにせMSの質が違い、アレンの異能、そして指導者であるハマーンが懇意。にも関わらずアレンはジオン軍どころかアクシズ、ネオ・ジオンの軍組織ですらないというのだから不安になって当然である。
それに比べてこの世界のネオ・ジオンは貧弱だった。
組織形態そのものも、豊かさも、人材も、MSも、何もかも。だからこそ支えるための一助となれると自身の自尊心を満たせるため多くのジオン残党が合流することとなり、前の世界のネオ・ジオンにはない情報が、技術が存在しており、それをアレンは欲した。
特に注目しているのは自身が開発するブレイン・マシン・インターフェースとは違うアプローチで開発されたリユース・サイコ・デバイスであった。
設計図でも抜くことができたならよかったが、合流したジオン残党は傘下に入ってはいるが情報共有はほとんどされていないのが現状だ。むしろ、そんなジオン残党よりも今出会ったばかりだというのにアレンとの共鳴で得たミソロギアの方が情報としては多く知っているような状態になってしまっているぐらいだ。
つまり、報告でしか知らないその技術をハマーンに手に入れてこいと言っているのだ。
「見返りは。やはりMSか?あの大型のキュベレイが気になるのだが……」
「さすがにキュベレイ・ストラティオティスは出せないな。そもそもあれは私以外作れるものではない。代わりにそちらが派遣してきたMSを私が改修したものをそちらに渡そう。核融合炉は1世代ほどアップグレードさせているので設計図も渡そう」
「それは現物を見てから判断しよう」
「了解した」