第四百五話
「アレン代表は紛れもなく狂気だな。1つのコロニーで連邦と戦うなど……それにあの宣戦布告などまるで地球征服を目論んでいる悪の組織そのものだったぞ」
「資源を手に入れるためには地球征服は効率がいいだろうが、統治することを考えると余計な付属品が多過ぎる。そのような手間を掛けてまで必要なものではないな」
「であろうな」
(ん?適当な間隔で支配して資源を搾り取った後に放棄すれば問題ないのか……しかし、資源とプルシリーズを引き換えにするのは割に合わないか)
とりあえずの交渉が終わり、雑談という名のお互いの性格や思想、好みなどを探る情報交換を和やかな?雰囲気で行う。
「その点、閣下は随分と重たい荷物を抱えているのに更に背負おうとしているのは少し荷が勝ち過ぎるのではないか」
「この程度の荷など造作もない事だ。それにたとえ如何に重かろうやらねばならぬことだ」
地球連邦を降し、地球圏を支配する。
それがネオ・ジオンの掲げる目標だ。
しかし、アレンはそれがどれだけ無謀だと言う。
軍事力だけで言えば世界最強と自負しているミソロギアですら地球圏を支配するのは不可能に近いと判断している。そもそも人脈や協調性や道徳や統治能力ややる気など多くが欠如していることを差し引いても、だ。
ネオ・ジオンはミソロギアに欠ける部分は多少補えているが地球圏を支配するとなると間違いなくエゥーゴとティターンズが共倒れしたことによる軍事力の低下に付け込む形で軍事政権の樹立となるわけだが、その肝となる軍事力は地球連邦を支配したところで昔のジオン公国のように水面下で整えれば数年で逆転できる程度の差しかないのだ。そう遠くない内に逆転されるのは目に見えている。
「地球に住む人間を宇宙へと出した所でネオ・ジオンへの反感はなくならず、出すまでに要する時間で連邦軍は軍を再編させることだろう」
「支配した後は支配者層には安全を保証し、民衆には厭戦感情を煽り時間を稼ぐ。その間に――」
「その程度でどうにかなるわけがない。前時代のアメリカや中国が周辺諸国に支配されて言いなりになったままで済むと思うのか」
「内部分裂をするように工作を仕掛ける」
「それはこちらだけではないぞ。どう考えても組織構造そのものが連邦よりもネオ・ジオンの方が劣る以上は分が悪い。何よりネオ・ジオンは誰を狙えばいいかはっきりしている分、余計にな」
とハマーンに向ける視線を強めながら言う。
それはハマーン自身も当然理解している。主君であるミネバ・ラオ・ザビを傀儡としているなどの言葉は調べずとも聞こえてくるほどには話されている内容だ。
ミネバ・ラオ・ザビの年齢を考えれば指導者として活動している方が異様なのだが、言いたい者は現実など気にしない。揚げ足を取る者はどこにでもいて、そういう者に限って実力はともかく、権力欲が人一倍強いことが多い。
そしてその機会は地球を支配するなら数多く生まれる。なぜならハマーンとミネバ・ラオ・ザビをトップとしているなら地球で外交を行う必要があり、そうするとネオ・ジオンの本土とも言える宇宙が隙となってしまうのだ。
「助言、ありがたく聞いておこう」
「まぁ内乱の勢力ぐらいならこちらに誘導してくれたら対処してもいい。もちろん報酬はいただくがな」
コロニーレーザーを2発ほど撃てば終わるだろうと考えるアレンだが、ハマーンはそれを察することなく。
「そうならないようにはするが、いざという時は頼むかもしれん」
社交辞令な回答をするだけであった。
「さて、このあたりでお開きとするか」
「次回はもう少し手順を踏んで話し合いをしたいものだな。」
「ああ、このアレン人形は連絡用にここに置いておくのでよろしく頼む」
「は?!こんなものを置いていかれても困――」
「私と話したい場合はアレン人形を触れてサイコミュを使う感覚で語りかければ、よほど忙しくない限りは話せるはずだ」
「おい、こちらの話を――」
「ちなみに忙しい場合はAIによる自動応答となる。ちなみに現在の応答も自動応答なので異議は認めない」
「―――――!!」
その後のハマーンのリアクションは本人の名誉のため規制(見せられないよ!)とさせていただく。