第四百十一話
親衛隊がザワつく。
本来ならそれは失態だが、今回は見逃そう。
かくいう私も動揺が抑えられない。
目の前に、明らかに『ハマーン・カーン』にしか見えない存在が、過去の自分がいるのだから。
「あ、でも、多分髪型は違うでしょ。あの頃は普通のツインテールだったけど私は首からのツインテールだからちょっとイメージが違うはず……それに……うん、なんとなく、同じだけど違う。この世界の私もわかるでしょ」
「そう……だな。確かに私達は同一の存在であって、明確に違うということがわかる」
同一存在でニュータイプ同士だからなのか、私と彼女が違うと感じられる。
そう、私と彼女は同じカバン(存在)なのだが中身に詰まった物(経験)が違うというのがわかる。これは互いがニュータイプだからわかることだろう。おそらく、オールドタイプが会ってしまうと難儀なことになっただろうな。
幸い、容姿の違いも大きく嫌悪感は……どうだろうな。この何とも言えない感情は今までに感じたことがない感情で、言葉に言い表せない。少なくとも負の感情ではないようだが……。
そういえば情報共有(強制)で視た彼女は私とほぼ変わらない姿だったが、今思い出してみると彼女がネオ・ジオンを抜けた後は連合軍との戦いになり、戦局やMSでの戦闘ばかりで個人を映すことはなかったな。その間に彼女は若かりし自分へと変貌したのだろう。
「先程も言ったが私やこちらのハマーンのような若返り技術を始めとし、病の殆どを治療することが可能だ。もっとも我々を信用するのには時間が掛かるだろうから無理強いはせん。だから我々の世界で不治の病とされていて、我々が治療可能な病をリストを渡しておこう」
ジャミトフが追加で渡して来たリストには確かに難病指定されている病の数々が並んでいた……四肢の復元というのは本当にそのままの意味で復元できるのか。義手ではなく。いや、若返らせることができるのならそれぐらいできても不思議ではないのか。
規格外過ぎて感覚が狂いそうだ。
「四肢復元なら下準備に時間は掛かるが、麻酔なし、手術は20分程度でリハビリをそちらでするなら日帰りも可能だから試すならお勧めする。もちろん値段は相応だがね。支払いは資源がいいのでネオ・ジオンがまとめて支払ってもらいたい」
支払いの方はいいが……20分?手や足をなくした兵士達が苦悩の毎日を過ごしているというのに20分程度で……入浴の時間のような手軽さで治る、だと?
「あ、そうよね。アレンがネオ・ジオンにいないってことは兵士の損耗率も……あー、この世界の私は思ったよりハンデがあるのね」