第四百十三話
思ったよりも軽い訓練内容にハマーン閣下は安心したようで、訓練は行うと言った。
元々訓練を行わないのは私よりも自身が困ることになることになるのだが……まぁフラナガン機関の訓練を受ければトラウマの1つや2つあって当然か。
だからこそ機械類を全く使わないものばかりを選んだのだが、かいはあったようだ。
それが功を奏したのようでハマーン閣下の我々を視る目が多少変化した。私から言わせると非人道的な実験はほとんどの場合は同意の上か、捕虜などだから随分と人道的だと思うのだが。
それはともかく、取引材料の1つであるリユース・サイコ・デバイスのデータをもらうことができたのだが……どうも私の知っているものとは随分違ったものになっているようだ。
というか渡された資料に書かれていたザクとリユース・サイコ・デバイスを採用したサイコ・ザク以前にザクそのものが一部見たこともない仕様になっていた。
サイコ・ザク……正式名称リユース・サイコ・デバイス装備高機動型ザクは、私達の世界とも共通する高機動型ザクIIとこの世界特有のザクのオプション武装・サブアームなる第3、第4の腕が装備されたものがあるそうだ。しかし、そのサブアームもザクの分を含めてもあまり多く生産されたわけでもないらしい。
確かにジオンは連邦に数が劣るため、火砲が増えるのはメリットとなるだろう。しかし、問題は通常のパイロットに4つの火器を操れるほどの技量を持ち合わせていなかったことと技量があってもどうしても機体重量が増幅してしまうた機動力が低下してしまうが嫌われてしまい主流にはなれなかったようだ。ちなみにそのサブアームの技術は連邦にも流れている。
こちらは両アームに盾を持たせて生存能力向上させたようだが、残念ながらこちらも主流とはなれなかったようだ。なにせ盾を2つも装備させると使えば使うほど弾薬分だけ軽くなり、なくなればパージしてしまえばいいジオンのザクとは違い、よほどのことがないと身を守る盾を捨てようとは思わない上に火器などよりもずっと重たい盾を2つも装備しているため機動力の低下はザク以上で、更には盾で攻撃を受けると衝撃があり、盾よりもサブアームの寿命が先に来ると問題が多いので練度の低い部隊に使わせているという感じらしい。
歴史的流れは変わっていないし、戦死者もそれほど変わっていないにも関わらずMS開発に関しては若干の違いがある……もう少し情報収集の精度を上げておかないと足元をすくわれるかもしれない。
話を戻すが、私の知っているリユース・サイコ・デバイスは採用した機体はあくまで四肢を欠損したベテランパイロットを戦場に戻すためのものだったはずだが、この世界ではむしろ四肢を落として高性能化を目指したものらしい。
事実としてサイコ・ザクはなかなかの戦果を上げているようだ。
リユース・サイコ・デバイスは脳波で直接操作するため人間が反応できる最速で操作できるためサブアームの問題だった機動力も追加で大型ブースターを装着することで解決したそうだ。
もっとも、検体と実験機の数少なすぎてデータとしてイマイチ信憑性がない。検体の能力なのかリユース・サイコ・デバイスの性能なのかはハッキリしないので多大な期待はしない方がいいだろう。こういう特殊な例で開発が遅れてしまうのは開発者あるあるだ。