第四百十八話
「ハマーン様!あのような武力を保った素性定かでない者達を信用していいのですか!今すぐ討伐すべきです!」
「新型核融合炉など普通の組織ではございません。連邦の研究所か何かでしょう。せっかく宇宙を手中に収めつつあるというのにあのような不確定要素を放置しておくのはあまりにリスクが高すぎます」
「いくらMSが強かろうと所詮コロニー1基の戦力にしか過ぎません。我々の軍なら問題なく一掃することができるでしょう」
彼らの発言は最もだと思うところがある。
しかし、問題はアレン代表の忠告によって露呈した彼らのあり方だ。
彼らは親衛隊で私が命を任せられる存在……だったのだが、アレン代表に彼らの忠信は別にあると告げられたことで念には念を入れるために調べさせるとアレン代表が言っていた通りだった。
しかも、裏で繋がっていたのはネオ・ジオン内の対抗派閥かと思えば、ティターンズや連邦だというのだから笑えない。元々シャアなどのジオン兵が関与していたエゥーゴならまだしもティターンズ、連邦なら裏切りでしかない。
そのような奴らがミソロギアを排除すべきと言われて受け入れられるわけがない。その発言はミソロギアという敵対組織を排除するための忠言や諫言ではなく、連邦から少しでも視線を逸らすための姦言にしか聞こえぬ。
アレン代表が自分達を守るために私に疑念を抱かせたのかもしれないとは思うが、アレと戦う覚悟をするのはなかなか難しい。
そもそもサイド7とルナツーを除くソロモン、いや、コンペイトウだったか……以外を支配下に置いたため戦力が分散している現状で――まぁ全軍で事に当たったとしてどうにかできるかはあの記憶を見せられては甚だ疑問ではあるが――現実的ではない。
それに支配下としたと言っても少数の連邦の駐留軍を排除したり無防備な状態のコロニーを脅しや金で抱き込んだに過ぎない。本当の意味での支配には至っていない。少しの揺さぶりで崩れ去る支配だ。
ただ、それが理解できない者が多くいる。
武力を持たない人間など殺したら面倒ではあるが力で黙らせることができる存在でしかないのだ。彼らにとっては。
あのジャミトフと話していて気づいたことだった。
いつの間にか私も権力を振るう者ではなく、連邦の高官達のように権力を振り回している者になってしまっていた。
そしてそれは自滅への一歩だと悟ったように語ったジャミトフの姿は印象深かった
「ミソロギアに関しては協定通りとする。異論は認めん。それよりも地球連邦の動きはどうなっている。何か秘密裏に動いていると言っていたが」
「ハッ、どうやらルナツーで新たなMSの開発が行われているようです。それもアナハイムとは関係がないようで……」
「アナハイムが関わらないMS開発……か」
ティターンズの残党と合流したか?しかし、ティターンズの工廠や研究所はコンペイトウにあり、今はエゥーゴが抑えていて、勢力が衰えたエゥーゴが更に後ろ盾を得ようとアナハイムをコンペイトウへ引き入れたという情報が上がってきている。
コンペイトウは内側からエゥーゴに食い破られた関係でほとんどの研究者や技術者は離脱することができなかったとも聞いている。
つまり、今回のMS開発は別ルートによるもの……か?しかし連邦にそれほどの力が残っているのか。