第四百二十三話
「改めて思うけどどう考えても国に属してない軍事力じゃないわね。私達」
私は模擬戦場としては完成したミソロギア2の観覧席に来ている。
そしてここでは今、母艦級が率いれる最大戦力同士で模擬戦が行われ、ハマーンは教導官としてこの場にいる。
「前の世界では世界に喧嘩を売ったというのに今更だな。そもそも戦力的には今の方が少ない」
「それはそうなんだけど、治安活動の一環だった派遣だったのに今では本格的な軍事遠征のための艦隊よ。それも実質母艦級1隻でできるなんて……ネオ・ジオンでどれだけ大変だったことか」
確かに普通の軍であればパイロットはともかく艦隊を動かすのには相応の人員が必要だ。
確かムサイ級の定員は150人だったはずだ。そうなるとMD艦をムサイ級と数えた場合1500人の人員が必要で、しかも母艦級はモデルこそザンジバル級だが、実質グワジン級に匹敵するが定員は母艦級、MD艦、MS、MDパイロット合わせ300人程度で十分運用することができる。しかもその内150人は母艦級の無駄に充実した福利厚生施設の運用とMD製造に必要な人員であって戦闘を行うだけの人員となると150人でも可能だが、グワジン級を動かすとなるとそれだけで人員は1200人を超え、つまり母艦級の軍を動かすには基本的に2700人以上が必要だ。
それを150人で運用できると考えると効率化が進んだが――
「まだ多いな。最終的にはワンマンを目指したいものだ」
「それができるのはアレンだけよ。それか自律無人兵器を開発できれば別だけど」
「自律無人兵器か……私が1から作ると暴走する気しかしなくて鹵獲したALICEのデータをベースにして改造してはいるが……」
結局やり過ぎると暴走してしまう未来が視えるのであまり本格的に力を入れていない。この程度でいいのだと諦めている。……だから外部接続されてない環境を整えて小規模で開発しかしていないのだ。
「それで母艦級は問題ないか」
「ええ、問題ないわ。ただ、今までの船と違って長距離用のメガ粒子砲が10門もある上にミサイルまであるからプル達が苦戦しているわ」
今回の母艦級の目的は地球侵攻用……厳密には制圧、占拠するわけではないから侵入か?……としているので大気圏外から地表に向かって支援するためにミサイルも用意していた。
しかし――
「でもプル達はミサイルが嫌いみたいね。遅くて迎撃されてアレンの大好きな資源を無駄使いしているみたい、って」
「さすがにプル達では地上の対空兵器の対処は難しいだろうから仕方ない」
私達は宇宙で暮らしているからあまり意識しないが、地上ではミノフスキー粒子を戦闘濃度で散布したとしても拡散率が高い上に対空兵器を有線による自動迎撃システムや遠隔操作が可能だ。
そして遠隔操作というのは殺気も薄れ、自動迎撃システムはミノフスキー粒子で命中率こそ落ちるが感情が介入しないし数も多いのでニュータイプにはやりづらいのだ。
それらをフォローするためのミサイルなので資源の無駄が多いとは思っても作戦が失敗するよりはいい。
ちなみにこのミサイルにサイコミュを搭載して回避や追尾なども可能ではあるが、さすがにそこまですると資源が勿体ないので通常仕様としている。
「ふむ、対空兵器の弾幕を再現し、ミサイルの必要性の再検証とプル達の訓練を兼ねて行うか」
「それはいいわね。連邦の主要基地の対空迎撃は凄いって話だからやっておくべきね」