第四百二十五話
<ハマーン閣下>
「アーガマめ、ほとんど支援がない状態でよくもここまで……それとも派遣した部隊の未熟を嘆くべきなのか」
自室で悪い知らせしか記載されていない報告書から目を逸して悪態を吐く。
カミーユ・ビダンというエースと代表者であるシャアの2人が乗り続けたエゥーゴの象徴とも言えるアーガマ。
そのエースと代表者という手札を共に失い、既に張り子の虎へと成り下がったアーガマなどさして脅威ではないと考えていたのだが……面倒な。
エゥーゴに余裕はなく、補給も満足にできなかったはずが、アナハイムのラビアンローズから補給を受けたようで、しかも新型MSまで提供されたようだ。
「アナハイムはろくなことをしない」
補給を許してしまったのはコンペイトウでエゥーゴと小競り合いが起こったことで仮想敵だった存在が明確に敵対関係になってしまったことで戦力をそちらに多く割かねばならなくなったことが起因している。
「そのコンペイトウの裏にもアナハイムの影がある。大した権謀術数だ」
張り子の虎であるとは言っても1つ懸念することがある。
それは……地球にいるアムロ・レイの存在だ。
アーガマの艦長があの一年戦争で活躍した第13独立部隊ホワイトベースの艦長、ブライト・ノア。地球で活動する反連邦組織カラバの中心人物の1人がハヤト・コバヤシ。裏ではカイ・シデンがなにやら動いているという情報が入ってきている。
アムロ・レイもカラバに属しているという情報があり、カラバとエゥーゴは協力関係でもある。
「宇宙に来ることを嫌っているという情報もあるが万が一にもアーガマと合流されたら象徴が復活……エゥーゴの息が吹き返す可能性がある。なるべく早く叩いておきたいのだが」
各サイドを占拠したことで兵士こそ増えたが新兵ばかりで、戦力として数えるにはしばらく掛かるだろう。そうなるとどこからか引き抜くことは……やはり戦力の捻出は難しいか。
アレン代表に頼みたいところだが、対価が恐ろしいし、何よりアレン代表が目を向けているのは地球での実戦がご所望なようで要請を断られてしまった。
「マシュマーの忠誠心は認めるが実力はいまいちだな……明らかに最初の頃は舐めているとしか言えんな」
アーガマとの戦闘記録を見直しているが、その戦いぶりはできの悪いコメディのようなものが多い。
そんな中で目を引くのは――
「このZガンダムを操るパイロットの成長率だ」
最初は操縦そのものが不自由で、次はライフルのエネルギーパックを忘れるなど、とても軍人とは思えないようなミスが多々ありながらも成長しているのが見て取れるが、その成長は侮れない。やはりニュータイプだろうか。
それに直近ではどうやら新型MSに搭乗しているようで、その攻撃力は目を見張る物がある。
「……仕方ない。なんとかしてこちらも新型のMSを送るか」
数が揃えれないなら質を上げるしかあるまい。
ちょうどミソロギアから購入した核融合炉を使ったものができあがったようだし試験運用にはちょうどいいだろう。