第四百二十七話
「…………アレン?」
「なんだ。ハマーン」
「確か、大気圏用MDを開発していた……はずだったわよね?」
「私の記憶でもそうなっているな」
「…………この仕様書を読むと明らかに高機動特化型みたいにみたいに見えるんだけど」
「そのとおりだ。レナスも機動性には優れているが、未熟なプルシリーズを戦場に寄与させるために扱いやすさと汎用性を配慮したことで及第点ではあっても最良とは言えるものではない。それに加え、緊急時の展開速度が向上して迎撃能力も向上させ――」
「それで、このMDは大気圏内で使えるの?」
「使えない。Zガンダムやイータのように変形機構を備えているが、大気圏内だと空気抵抗で自壊してしまうし、変形機構に砂埃などが入ってしまい支障が出る可能性が高い。それに自壊しない程度の速度ではいい的だ」
変形機構はスラスターの方向を集中させることで加速性と機動性を高めることができるが、Zガンダムのように複雑な変形機構ではなく、ファ・ユイリィが乗っていたメタスの簡易変形機構の方が近い。
そして武装は大型高出力ビームライフル1本と運用方法を絞っている。
「……つまり、興が乗ってつい目的を忘れて作ってしまった、と」
「忘れてはいない。それよりも優先しただけだ」
「そんなにキリッとした顔で言われても……むしろ悪くなってるわよ」
「すみません。ハマーン様」
スミレがハマーンにペコペコと頭を下げている。共犯だからわからなくはないが謝る必要はないと思うぞ。
「だからこの機体の名前は高機動型レナスなのね」
シルメリアは大気圏内用MDのネームに定め、レナスは宇宙専用MDとして定めたからな。ついでに言えばアーリィは未定だ。
「それで肝心のシルメリアの完成はいつなのよ。ネオ・ジオンの地球侵攻はもうすぐよ」
「そちらは土台は完成している。今は集まる大気圏内の情報を逐一OSや細部に反映している途中だ」
「まぁMDは失敗しても人命に影響がないことがメリットよね。普通のMSだとこうはいかないわ」
「ネオ・ジオンと共同で動くというのにさすがに恥を晒すのはいただけないがな」
「ですね」