第四十三話
デラーズ・フリート残党から得た情報を基にあるものを再現してみた。
「これがガーベラ・テトラか」
スクラップでこれを再現するのには随分骨が折れた。
パーツ自体はアナハイム製造と言う名のジオニック社製に近いものだったため問題はなかったが問題はあったのはエンジンだ。
こちらはどうやら完璧に連邦製のようで製造するのにはかなり手間取った。
ただし、正確に言うとエンジンはGP02のものになっている。なぜならGP02のものの方が出力があったからだ。
さて、なぜこの機体を再現したのかというと現在の連邦の技術力がどの程度か知るためである。
ガーベラ・テトラ、本来の名前はGP04……もっと厳密に言うとガンダム試作4号機・ガーベラ、つまりデラーズ・フリートが奪取したGP02や星の屑作戦を妨害し続けたGP01、GP03の兄弟機である。
つまり連邦の最新鋭機であり、これがこれからの標準になる可能性が高いため研究用として作り上げたのだ。
……それにしてもデータがある状態で再現に2ヶ月も掛かるとは思いもしなかった。
いくらかテストを行ってみた結果。
「一般兵には無用の長物だな」
機動性、加速性に優れた機体だが、その分凡人では直線的な機動になりやすく、ザクでは少々厳しいがゲルググであったなら問題なく撃破できるだろうというものだった。
「もっともプル達が乗るだけでどうにもならなくなるが」
サイコミュを搭載していない状態ですら現状では敵なし状態だ。
この機体ならばイリアの乗るゲルググですら相手にならない……さすがにハマーンには勝てなかったが。
もちろんイリアがガーベラ・テトラに乗れば20対1でも負けないだろう。
ハマーンはサイコミュに慣れ過ぎていて通常のMSだとオーバーヒートさせるので運用テストではあまりあてにならない。
「今のプル達が相手にこれだけの成果を出すということは優秀なパイロットが操縦すれば現行のMSでは対抗が難しいということか」
ハマーンが悩ましげに言っているが現実はそれほど甘くないことを教えてあげよう。
「これはOSが未完成の状態だ、といえばどう思う?」
「……」
そう、この機体は試作機でしかなく、本来パイロットの操縦を助けるOSが未完成の状態なのだ。
もしOSが完全なものとなった場合は……。
「連邦と戦うならばこれを上回る機体が必須、ということか」
「そういうことだ」
「……現在進めている開発プランを見直させるとしよう」
そうなるだろうな。
私が進めている開発プランもいくらか修正を入れざるを得ない状態なのだから。
「このエンジン、生産性はどうなんだ」
「ここじゃ無理だ。性能が落ちるがガーベラ・テトラに搭載されていたエンジンを使うことを勧める。あちらはここでも生産が容易だろう」
どうもこのガーベラ・テトラ、最初からアクシズに渡るように設計されていた節がある。
これがアナハイムの意図かアナハイムで働く元ジオニック社員の支援なのかは不明だが、大いに刺激になって結構だ。
それをハマーンに伝えておく、おそらく何らかの手段で接触して情報を得ることができるだろう。
新しい技術だったら嬉しいが。
「それにしても他にも仕事があるというのに、こんなMSまで作ることができたな」
「触手の改良がなければ不可能だったな」
ハマーンに無理を言って融通してもらったガンダリウムγとスミレが開発した新機軸のサイコミュにより軽量化に成功したため触手の数を4本から8本に増やすことができたのだ。
これにより作業効率が上昇し、プル達を構うのも楽になった。
「……その触手のおかげと言われると微妙な気持ちになる」
「何を言う、触手が増えてハマーンも喜んで——」
「いないから!全然喜んでないからっ!」
とりあえずガーベラ・テトラはプル達の練習機ということになった。
私のお手製のMSをそう安々と渡すわけもない……そもそもメンテナンスも難しい機体である以上私達が運用するしかないのだが。
おそらくアクシズでMSを個人所有しているのは私ぐらいだろう。扱いは一応自作作業用パワードスーツ……になるのか?
さすがに兵器は所有できないはずだからな。実際はフル装備だけど。
そういえばプル達のことが噂になっているらしい。
ガーベラ・テトラの試運転で正規パイロットをボコボコにしたため、乗っていたパイロットは誰だということになったらしい。
正体こそ掴めていないようだがハマーンの護衛であるイリアがガーベラ・テトラに乗っていることは判明していたため、そこからハマーンの直属の部下か親しい者ではないかと推察されているようだ。
クローン体はまだ増やす予定だからあまりプルのことを知られたくはないのだがな。
そういえばハマーンとプルの関係が悪かったが、プルツーやプル3はどうかというと……
「邪魔するぞ」
「邪魔するなら帰れ」
「……お見送りする」
やはり関係は悪い。
いったいなぜこれほど関係が悪いのか。
プルに関してはハマーンが私に暴力を働いたから……と思っていたが、プルツーやプル3の反応を見るとそれだけではないようだ。
いったいなぜこれほど関係が悪いのか……まぁ研究に支障がなければ問題ないか。