第四百三十三話
「威力は十二分だが、指向性が甘いな」
ジャミトフはバンカーバスターの成果をみてつぶやく。
今回は着弾数が多かったから司令部を叩くという目的を達することができたが、思った以上に地下へのダメージが少なかった。
「少々のデータでは理想を実現するのは難しいな。大気圏内は不確定要素が多すぎる」
珍しくアレン人形が発する声が重い。
想像以上に芳しくない成果に若干落ち込んでいるようだ。
「だが、シルメリアの方は問題ないようだな」
司令部を失い、統率が乱れているMS部隊を刈り取る様子を見ながらジャミトフが言うが――
「そう見えるか」
「ああ、こちらに被害ないようだし……今、敵MSも全撃破を確認された。動きにも違和感はなかったようだが」
「なら私が想定している動きを見せよう」
そう言うとモニターに2つの映像が流れ始めた。
片方は今まで行われていた戦闘風景、もう片方は――
「私が未来予測システムを応用して見せる本来の戦闘内容だ」
「……なるほど、確かにアレンが求める水準がこれなら不満に思うのも無理はないな」
左右の映像はまるで違った動きをしていた。
それは明らかに現実の方が動きが悪く、アレンが作り出している映像の方がなめらかな動きをしている。リフレッシュレート144Hzと30Hzぐらい差がある。
「プルシリーズの不慣れもあるが、こちらもバンカーバスターと同様に調整不足なところが多いな。このままでは同数だといくらか落とされてしまう可能性が高い」
「無人兵器で同数有利なのだから十分な気もするが……こちらの戦力が画一的である以上は改善は急ぐべきか」
「バリエーション機を作ろうにもベースが仕上がっていないからな。しかし、気温に湿度に気圧に、と自然とは難敵だな」
「ジオン公国が連邦に勝てなかった要因の1つだな」
「まぁ雷を新兵器なんて言っていたら地球にいるだけでノイローゼになってしまうから当然の末路だけど」
「それを聞いた時はなんの冗談かジオン公国が流した偽情報かと疑ったものだ」
「かくいう私も地震は未体験だから人の事は言えないかもしれないがな」
「地震は地域差が強いな。震度3あたりなら無反応なんていう地域もあるらしい」
「それは生存本能的に大丈夫なのか……さて、そろそろ帰還プロセスに入るとしようか」
「わかった。ブースターを降下させろ」
「了解」
シルメリア単独で帰還するのはまだノウハウ的に難しく、妥協策としてオプションパーツによって大気圏離脱を行うことができるように開発された。
そのオプションパーツは戦闘時にはデッドウェイトになるため、戦闘終了後に母艦から射出され、シルメリアまで搭載されたサイコミュでドッキングまで操作される。