第四百三十四話
「大気圏離脱は上手くいったか」
これぐらいは上手くいって貰わないとさすがの私も凹むがな。
ハァ、私自身なら月からでも地球の生物が捕捉できるというのに兵器開発となると地球という環境は面倒極まりない。
「とりあえず今回得たデータをOSに反映して帰還後に機体の改修、整備を考えると……再出撃には10分といった所か」
「相変わらず仕事が早いな。では次の作戦にも支障はないのだな」
「無論だ」
今回のハマーン閣下からの依頼は1つだけではない。
思ったよりハマーン閣下に反発的なジオン残党はいて、最近になってハマーン閣下を亡き者にしようとする残党まで現れている。
どうやらハマーン閣下亡き後に自分が摂政になろうという魂胆らしいが……地球の残党風情が寝言を垂れ流しているのやら。
ネオ・ジオンの本拠地は宇宙だから万が一地球でハマーン閣下を殺れたとしても成り代わろうと動く頃には別の誰かが成り代わっているか、誰からも支持されずに終わるのが火を見るより明らかだ。
「シルメリア全機帰投確認。メンテナンスベッドに収容しました」
「では早速取り掛かろうか」
こういう時にMD母艦は便利でいい。
これがミソロギアならプル達が格納庫から退避するまで待たなくてはいけないが、MD母艦はそもそも無人で考慮する必要はない。
「まずは洗浄、フレーム再構築、整形し直した装甲と装着、関節の保護材の更新、ビームライフルとサーベルの出力調整、バルカンの弾倉と予備弾倉の変更……」
ジオン残党がシルメリアを戦闘機と誤認していたが無理からぬことだろう。
シルメリアの変形中の姿は機体中央が分厚く、サイズも大きいがステルス戦闘機と類似しているのだ。
MS形態時はレナスより角張ったデザインではあるがヴァルキリー然とし、変形時はMSそのものを折りたたみ、背にあるウイングスラスターを本体と連結させると角張った本体とフラットになるため通常のMSの変形とは違って関節部や腕、足などは見えず、ステルス戦闘機のような姿になる。
ちなみに変形中に被弾するとウイングスラスターに当たる関係上、高確率で推進剤が爆発してしまうのだが無人であるMDで、そして機密保持にもなるので大きな問題ではない。
それにしてもビームライフルを調子に乗って出力を上げ過ぎてオーバーキル過ぎるし、ビームサーベルも同様、基準を前の世界のままにしていたのは間違いだったな。後、バルカンは思ったよりも便利だということを知った。
大気圏内で何が便利かイマイチわからなかったが地上戦経験者であるカミーユやシローなどの意見を取り入れて付けてみたが、ミサイル迎撃はともかく、対人や対車両、対建築物などに有効だった。ビームライフルでは連射できない。ビームマシンガンなんてものもあるが、あれは大気圏内だと減衰してしまうし、そもそもビーム兵器そのものが大気圏内だと威力が安定しないのに1発の収束率が低いマシンガンなんて信頼性が低すぎて運用できない。
そこでバルカンだ。
資源を消費してしまうし、重量が増えるなどデメリットがあるにはあるがそれ以上に連邦の運用データが揃っているので実戦投入がしやすかったという面がある。それに私達にはあまり多くない実弾を用いた生のデータも欲しかったという理由もある。
資源は消費するがな。(大事なことなので以下略)