第四百三十五話
シルメリアは予定通り4度出撃し、作戦は成功に終わった。
ただし、こちらの被害がなかったわけではない。
2度目は特に問題なくドム3機、鹵獲したらしいジム2機とレア機体な陸戦型ジムが1機……最初期MSは整備性劣悪なのにジオン残党はよくもまぁ今まで動かせたな、と感心する……を相手に問題なく撃破。
そのあたりでせっかく資源(MSの残骸)があるのだから持って帰る手立てがあったら――と考えたが、大気圏離脱のための推進剤との交換比率が悪かったので断念した。
ミノフスキードライブが戦闘機動に耐えられるものになればともかく、現状の主力MSは推進剤をバカ食いするのでミソロギアでは最重要資源の1つなので交換レートは高めなのだ。
そういう意味ではシルメリアの運用はかなりコストが掛かっている。重力下での常時飛行に、大気圏離脱に、と無重力戦とは比にならない推進剤の消費量だ。
少し話が脱線したが、問題は3度目からの襲撃だ。
2度の襲撃で私達の対象が自分達だと察したようで最初から防衛態勢を整えていたのだ。
これがキュベレイシリーズ、クィン・マンサシリーズなら蚊か蝿程度にしか思わないが、試運転中のシルメリアでは完全に待ち受けられた状態だと勝てはするが無傷では済まないと予想していたが案の定2機撃破されてしまった。
いや、性能だけの話じゃないな。
彼らは自分達が助かる道を探して戦ったのではない。
次も行われるだろう仲間への襲撃で少しでも勝率を上がるように、と防衛ではなく確実に数を減らすための集中砲火。
襲撃の度にパイロットを入れ替えていたことも影響しただろう。シルメリアの反応速度の鈍さに、地球の重力に、不慣れなパイロットが乗り続けるのだから。
もっとも次の襲撃の時には製造した予備機を投入したので頭数は減ったりしないが……減ったのは撃墜されたプルシリーズの自由時間だな。
最後の襲撃では事前情報よりも敵MSと対空砲の数が多くて5機落とされた。
確認してみるとハマーン閣下のところから最後の残党へ情報が漏れていたらしい。それは私達の戦力調査と戦力を減らすために意図的に行われ、最後の残党が事前情報よりも戦力が多かったのは随分と無理して戦力をかき集めた結果だったようだ。
まぁ損害はシルメリア7機とプルシリーズの自由時間程度が犠牲になった程度なので問題はない。こういう事態も想定してそもそもシルメリアには希少金属はかなり抑えて設計しているから大したものではない。実戦データもサイコミュで常に母艦級に送られているから取りこぼしもない。
それに加え、ハマーン閣下から賠償として資源を払ってもらったので特に不満はない。賠償がなくても不満はなかったがな。
「それで我々はこの座標で待機でいいのだな」
ジャミトフが確認を入れてくる。
「ああ、そのまま地球を監視することになる。ハマーン閣下とミネバ・ザビが地上に降りたことでエゥーゴとカラバが動き出したようだからそれを警戒してのことだ」
「ふん、アレンなら既にどのように動いているのかわかっているのだろう?」
「もちろんだ」
「ならばそれを教えなくていいのか」
「聞かれたなら答えるのも吝かではないが、あまり口出しし過ぎるとお節介にしかならないだろう。実際前の世界では私達が関与し過ぎて影の支配者なんて呼ばれていたが、この世界でそれをやると間違いなく私達の排斥に動くだろう」
「それでもいいと考えていると思っていたが?」
「否定はしないが世界征服なんて面倒だし、戦争に明け暮れていたら研究もできない。せっかく新しい題材も手に入ったからしばらくは大人しくしているつもりだ」
「……これが大人しく、とはとても言えないと思うが」
「キュベレイシリーズが出ていないのだから9割の戦力は出していないが?」
「1割でも十分だと気づけ」