第四百三十八話
「む、そういえば今は戦闘中でもあったか」
建物が揺れることでMS同士の戦闘が行われていることを思い出した。
気配を探ると囮部隊か?百式、ガンダムmk-II、Zガンダム、1機よくわからないMA?戦闘機?形状的にはSFSの一種か?いや、メガ粒子砲を撃っているようだし機動力を持たせたスキウレと言ったほうがあっているか。
それらにはビーチャ、モンド、イーノ、エルがいるようだが、エゥーゴはよほど手が足りないと見える。ジュドー・アーシタ同様ろくに訓練を受けていないのが感じ取れる。なんとか最近覚醒したニュータイプの能力を本人達は無自覚なまま使い続けて凌いでいるようだ。
もう1人の知らない女も訓練こそそれなりに受けているようだが、それでも年が若く、ニュータイプの素質はジュドー達に比べると劣っているが技量の差で戦えている。
しかし……ネオ・ジオン軍の劣悪っぷりはなんだ。
数的には圧倒しているにも関わらず、彼らを撃破できないのは慢心、訓練不足、派閥争い、それぞれの思惑が渦巻いている結果だ。
勝って兜の緒を締めよ、どころか武器は持っていても油断して鎧も着ずに戦っているような状態だ。
全く、それで力不足な上に主導権の奪い合いで連携不足で一部はあわよくばエゥーゴがハマーンを亡き者にしないか……などなど人間を統率するのは難しいとは思っていたがここまで愚かだと嫌気が差す。
そしてそんな混迷とした戦場には本命のアーガマとカラバの部隊が向かってきている。
「アーガマが1隻だけ離れて行動している……そうか、アーガマの艦載機は既にここに全ているので前線に出るには心許ないからか。いや、この気配は……砲撃を狙っている?前の世界で私達を狙った高出力のメガ粒子砲を装備しているのか」
なるほど、カラバの部隊がこの戦場に来たならハマーン閣下は安全な場所に避難するなり陣頭指揮を執らなくてはならないだろう。となると十中八九旗艦のサダラーンに戻る確率が高く、それをあの高出力メガ粒子砲で狙撃してしまえばダカール市街や集まっている連邦の高官にも被害を出さずに済む可能性が高いわけだ。なかなか考えられているな。
「というわけでハマーン閣下の対応はどうする」
「サダラーンで指揮を執る」
私があえて口にしたにも関わらず対応は変えず、か。
そうして自身が囮となることでミネバ・ザビを避難させる手筈でもあるようだ。思った以上にハマーン閣下のミネバ・ザビへの忠誠心はあるようだ。
「手助けは必要か?」
とは言ってもシルメリアをすぐに出撃させても到着までは20分は掛かるので多少タイムラグがあるが。
「必要ない。アレン代表に借りを作ると後が怖い」
「別に少し体で払ってくれればいい」
「……」
ジリジリと後退るハマーン閣下に安心するように笑顔を向ける……が、後退る速度が上がった。なぜだ。
「では、とりあえずはアーシタ兄弟はこちらで身柄を預かるがいいな」
「だめだと言えば?」
「言うのは自由だ。もちろん本人達も、な」
それを考慮するかはまた別の話だが。
「ハァ、ジュドーよ。一応アドバイスしておくがアレン代表に迂闊な発言はやめておくことだな。私以上に難物だぞ」
「自分で自分を難物とは――」
「ジュドーは私と一緒にいるの!」
私の言葉に割って入る随分と聞き覚えがある声に向かって反射的にテンタクルを動かすが、反射的だったためか、私も少し動揺があったためか、避けられてしまう。
そしてアーシタ兄弟の下まで辿り着いて私を睨みつける。
「プル!」
「ジュドー。あの人は危険だよ!早く逃げて!私が時間を稼ぐから!」
「そんな事できるか!逃げるなら一緒に逃げるぞ」
慣れてはいるがなにやら私はまるで悪人のようだな。間違ってはいないが。
しかし――
「まさかこの世界にもプルシリーズが存在するとは、な」
正直、私がいないのだからプルシリーズは存在しないと思っていたのだが……まぁ教育方針が違うようで中身も能力、そして何より気配が大きく違っている。そのため近くに居ながらもプルシリーズだと気づけなかった。