第四百四十話
というわけで共鳴によってジュドーの愉快な仲間たちに『アーシタ兄弟は預かった。(お前達の)命が惜しくば即刻撤退せよ。ネオ・ジオンとは話がついている』と伝えたのだが、なぜか敵意として返ってきた。
「言葉のチョイスの問題だ!」
と、うっかり共鳴に巻き込まれてしまったジュドー・アーシタにツッコまれた。
言われてみれば人質を取った時の常套句だったな。状況的には似たものだが本人の意志に則ったものでもあるのだから人質ではない。(逃亡を諦めただけなので実質は人質である)
それにしてもジュドー共々共鳴に巻き込まれたこちらのプルは私が怖くて仕方ないようで今ではジュドーの後ろに怯えたネコのように隠れ、半分だけ顔を出してこちらを恐る恐る見ている。先程までの威勢は何処に行ったのか。
ただ、目があったら威嚇してくるくらいには根性があるようで、おそらく私が動けばジュドーを守るために出てくるに違いない。
ジュドーとプルの反応の違いは戦いの中かで覚醒しただけの素人なジュドーと戦うために生み出され育てられた兵士であるプルの違いだ。
ハマーン閣下も共鳴に巻き込まれていたのでジュドーの愉快な仲間たちに連絡がいったと認識して既にサダラーンへと向かった。
……しまった。共鳴で情報伝達をしていてミノフスキー粒子はチャフ代わりぐらいにしか考えていなかったが一般的には通信を妨害することを忘れていた。
仕方ないのでジュドーの愉快な仲間たちに訂正のお知らせを送った。『ハマーン閣下とは話がついたが戦場に反映されるのはタイムラグがあるので注意するように』と。
ん?誰か騒いでいるような……気のせいか。
「そろそろ時間か、お前達衝撃に備え……いや、大人しく座っていろ。立つな、騒ぐな、むしろ何も考えるな。わかったか」
「一体何が――」
「座れ」
「ジュドー、座ろ?危ないよ」
やはり素人で悪ガキなジュドー・アーシタは素直に言う事を聞くことができず、逆にプルは要警戒対象であっても上位者に従うように(完璧ではないが)教育されているだけあって抵抗しないようだ。まぁウチのプルシリーズ……上位はもちろん、中位ナンバーにも劣るがな。
――シルメリアが戦闘領域に到達、緊急展開用ブースター(命名はアレンが設計から完成まで3分で仕上げたなんちゃってなのでテキトー)のパージを確認、落下コースは想定通り――着弾――むっ、予想よりも衝撃が強いな。若干だから問題はないが――
「衝撃波到達まで後10秒、立つな騒ぐな考えるな。特に動くな。何があってもな」
ジュドー達の返事を聞く前に、衝撃波はやってきた。
ガラスは等しく割れ、建物も激しく揺れ動いて罅まで入っている。手抜き工事か?なんて巫山戯た思考を巡らせながら飛来するガラス片や外から飛んできた石などを全てテンタクルで弾き返す。
他の飛来物はともかくガラス片が面倒だ。あまり力強く弾くと細かく割れてしまい、さすがの私でも防ぐことができなくなる。一応ジュドー達に到達する前に私に当たるように盾となっているから問題はないはずだが――
「よし、想定通り問題なく過ぎたな」
「も、問題ないわけないだろ!!!」
「ダカールの近くには砂漠地帯があってよかった」