第四百四十一話
「ところでジュドー・アーシタ。アーガマには親しい者はいるか?」
「え?そりゃシャングリラからお世話になっているからそりゃ……まさか」
「ネオ・ジオンの手土産として沈めるべきかどうか考えている。今回のことでずいぶん無理を聞いてもらったからそのぐらいはしてもいいと思っているわけだ」
以前まではこちらから手助けする理由がなかったため、エゥーゴの顔とも言えるアーガマをどこともしれない組織が堕としてしまえばネオ・ジオンの威信に関わる……正直、この世界のネオ・ジオンの練度では威信も何もない気がする。アーガマが消耗しきっていた頃に始末できなかったあたり、な。
「や、やめてくれると助かるんだけど……」
「ならば別の手柄首を――ちょうどいいところに手頃なものがいるようだな」
確かガルダ級とかいう地球連邦名義でありながら実質ティターンズが主導して開発した大型輸送機だとジャミトフから聞いている。
表向きはジオン公国の攻撃空母ガウの思想を取り入れて、ガルダ級を常時飛ばし続けることで地球の制空権を保持する計画……となっているが、本当はTR計画の完成形までの繋ぎであり、その後はTR計画の完成機への補給、もしくは補助戦力輸送を担う予定だったそうだ。
なんとも壮大な計画だ。そもそもTR計画完成機の構想そのものが壮大だから誤差レベルといえばそれまでだが。
話を戻すと、そのガルダ級というのはこの世界では前の世界と同じく6機生産され、内2機が沈んでいるはずだ。
しかも、その生産コストは地球連邦であっても安々と生産できるコストではない。つまりかなり希少な機体となるわけだ。
是非とも欲しい。
部品の消耗を除けば補給無しで飛び続けることができるように設計されている輸送機などなかなかお目にかかることはない。宇宙なら普通だが、大気圏だからな。そしてそれを実現する熱核ジェットは気になる。
もっとも熱核ジェットはMDやMSに使うこと現行のものではできないだろうが……何かヒントがあればいいのだがな。
パワーウエイトレシオ……エンジンの出力と重力を比べた時の値が熱核ジェットは悪いため、どうしてもドムの脚部のように肥大化してしまう。これは空気は熱を排出するのにあまり適していないために冷媒を別途用意する必要がありデットウェイトとなることが大きい。更に瞬間出力は熱核ロケットエンジンに劣る。
つまり、推進剤の消費はなくなるものの機動性も運動性も下がってしまう。
これがMSならプルシリーズの技量でフォローができるが、MDではいい加減タイムラグで操縦し難いと苦情が来ているのだからこれ以上動きを悪くするなど損耗率を上げることになるので推進剤の方がまだ安上がりだ。
と、また脱線したな。
「ジュドー・アーシタ、ガルダという大型輸送機を知っているか」
「いや、知らないな」
「ならこちらをいただくとするか」
しかし、奪うのはともかくその後が問題だ。
今回も投入した戦力は当然シルメリアだ。である以上は戦場にはミソロギアの人間は存在しない。
そもそも連邦系の航空機など操縦できるかどうか……まぁ航空機など飛ばすだけなら1人でできるようにオートメーション化されているので操縦席を見ればわかるだろう。
だが、人員が問題か。
アレン人形で乗り込むにしてもこの3人はどうするか……シルメリアにコクピットがあればそこに入れておくのだが、あいにくパイロットが乗る想定なんてされていないのでそんなわかりやすいデッドスペースは最初から存在しない……のだが、困っているのも事実。次の機会もあるかもしれいのでせめて2、3人程度は(監禁も視野に入れて)乗せるスペースを何処かに用意するか?いや、とりあえず、今は目の前のことを考えよう。
ジュドー・アーシタとこちらの世界のプルだけならシルメリアの手で運ぶだけだが、一般人で術後のリィナ・アーシタをそのように運ぶのにはさすがに非常識なのは理解できる。
それに手に入れた後はどうする。宇宙が拠点なのだからガルダ級の出番はない。ただ私が欲しいだけだ。一応シルメリアを載せれば展開速度は早まるがそこまで求める必要があるのかは疑問だ。
まさか宇宙に持っていくわけにもいかないし。