第四百四十六話
とりあえず降伏を受け入れたわけだが、このままじゃ信用できるわけもないんで乗組員の武装解除をしていく。
わざわざ私が見て回ったが、やはりハヤト・コバヤシの判断に納得できなかった者や別派閥の者などが襲ってきた――中にはハヤト・コバヤシを巻き込むように、むしろお前が死ねと言わんばかりに襲ってきた者もいた。
当然全てダルマにして無力化、降伏した上に貴重なサンプルのハヤト・コバヤシを殺させるわけもなく、今も傷1つなく生きている。
襲撃されることは問題ないが……ただ、襲撃される度にガルダ級が傷ついていくことが腹立たしい。既に私のものだというのに嘆かわしい。それにそのままだと派手な爆発を撒き散らすロケットランチャーや手榴弾の処理が面倒だった。
そんな傍らで――
(この得体の知らない存在が新たなる人類の可能性だとは思いたくないな)
などと失礼なことを考えていたが、オールドタイプ基準で言えば考えただけで口にはしていないのでセーフとしてやろう。ニュータイプではあっても訓練は受けたことが無いようだからな。
「これで最後だ」
「……なぜ最後だとわかる」
「相手が生物ならその気配はわかる。なんだったらアーガマの乗組員の数もわかるぞ」
ミソロギアからここまでの距離を考えればアーガマの距離なぞ誤差のようなものだがな。
乗組員を全員捕縛したので中間圏から成層圏と近づけていたジュドー・アーシタ達を抱くシルメリアを着艦させるように操る。(ちなみに最初に待機していた中間圏が高度50km~80kmで成層圏は11km~50kmである)
シルメリアと医療コンテナが到着するまでは時間が空いたのでブリッジへと赴く。
「さて、操艦にブリッジクルーだけはそのままにしたが……ふむ、やはりあまり人数は必要ないように設計されているようだな」
ジオン系とは随分違うが、わかりやすい素直な作りをしている。
一年戦争当時から人材、人手不足に陥っていた連邦が促成栽培の兵士が少数でも運用できるように設計されていたが、戦後に開発されたガルダ級も例外ではないようだ。
ジャミトフ達から話は聞いているもののガルダ級の設計データがあるわけでもなく、前の世界とこの世界にはところどころ私が関係していないにも関わらず違っていたりするので確認は必須だ。
「ああ、そうだ。別にネオ・ジオンに肩入れするのはガルダ級の略取までとするのでハヤト・コバヤシ」
「なんだ」
「指揮しても構わんぞ」
「は?いいのか」
「ガルダ級略取は私達の独断で、結果的にだが一時的に指揮系統を混乱させることで協力関係に見えるかもしれんがそういうわけではないので遠慮はいらん。死者の念に関しては戦闘が終わった後でいいだろう?」
ある意味、私がここにいる以上はネオ・ジオンも寄せ付けるつもりはないのでむしろ戦闘後ガルダ級がなくなるだけで生命の保証はされるのだからむしろカラバ側に味方していると言えるのではないだろうか。
「し、死ぬかと思った」
「パイロットスーツを着ていたのに大げさな」
重力があるあるため自力ではシルメリアの手から降りることができないことをうっかり忘れるという間抜けな失敗をしたりしながらジュドー・アーシタ達を降ろして早々の一言だ。
宇宙空間でも問題ないパイロットスーツを着ているのだから大気圏内であれば問題ないだろうに。
「宇宙にいる時とは違って地球に吸い込まれる感じがして落ち着かないんだよ。地上にいる時より宇宙にいる時よりも地球を感じるというか……」
ふむ、つい先程強いニュータイプの力をしようした影響かもしれないな。
これはまた新たに分析することが増えたようだ。
「げっ?!な、なんなんだよ?!あの人達、手とか足が――」
「少し騒がしかったので躾を少々な。ああ、しかしリィナには刺激が強いと思うが、意識は?」
「だ、大丈夫だ。リィナはまだ寝てる」
「寝室にあんなしてもいいがもうすぐ医療コンテナが到着するので、それで診てからにする」
「リィナを先に診てくれるのは嬉しいんだけど……あの人達の方が重傷なんじゃ……」
「大丈夫、手足のような末端は切り落として新しいものを生やせばいいだけだから内臓よりも手間はない」
「本当かよ」