第四百四十七話
「本当に手が治っている、な」
「ですね」
「片手は不便だから良かったね!」
ハヤト・コバヤシとジュドー・アーシタが手術完了後の(自分で量産した)患者を見て呟き、プルは能天気に喜んでいる。後、その他大勢は切り落とされた手足が再生されると喜んでいる。
「でも変だよねー。片手だけ途中から別人みたい!」
骨の長さは元の腕を参考にして再生させたが、さすがに筋力量までは再現せずに一般人の平均値を参考にしている。できないことはないが相応の手間な上に他にも患者がいるので別途料金を貰わなければやっていられん……見積書を渡しておくとしよう。まぁ私としては自身で鍛えて取り戻した方が懐的にも愛着的にも慣れ的にもいいと思うが、それは患者の選択次第だ。
ああ、でも健康診断の結果治療を勧めるものも載せておこう。何人かはステージIIの癌や虫に寄生されていたりしている。もっともこの程度の治療なら私のところに来る患者はいないと思うが……それにしても寄生虫か、コロニーで暮らしていると自動で滅菌されているから忘れがちだが気をつけておこう。万が一にもバイオハザードでも起こったら面倒だ。シルメリアやMD艦の滅菌作業のレベルを帰還時には上げるように設定しておくとしよう。
「ついでに警告しておくが、治療した後に暴れたりすると必要最低限だけ残して放置するのでそのつもりでいるように」
人形単体でもどうにもならなかったのに1機とはいえシルメリアが増えたというのに戦力差を理解できない5名ほどに視線をやると目を逸らして気も逸れたようだ。これ以上いらない手間が掛からないようで結構。
「ところで、リィナは本当に大丈夫なんだよな?こんなカプセルに入れられて……死んでないよな?」
このシスコンめ、その問いはもう15度目だぞ。いい加減にしろ。
「それに入ると元の体よりも健康体になるので問題ないと言っているだろう。それとも理論を説明してほしいのか?」
「ごめん、邪魔したな。治療に戻ってくれ」
全く、手間の掛かる子供だ。
ミソロギアにいるジュドー・アーシタに比べるとやはり若いだけあって幼い。それにスレた感じが少ない。
人殺しをせずに成人した者と人殺しを経験した未成年の者と比較して人殺しを経験したにも関わらずスレていないのは不思議だ。通常なら殺人によるストレスで心が歪むものだが……もしかすると教育レベルが低いためか命の尊さを殺しによって無理やり自覚させた方が本当の意味で尊さを学ぶことができるのかもしれない。
ただしこれは命の尊さを軽視している私が思考で辿り着いた結論なのであまりあてにならないがな。
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筋肉痛だと思っていた手の痛みですが、今朝見てみると内出血していました。