第四百四十八話
「これにて終了」
「到底1日で終わるとは思えなかったのに……夢か?」(触手が蠢いて手術している光景は何処からどう見ても悪夢か出来の悪い映画だったがな)
「だから言っただろう。手足の再生程度大したことではない。さて、ハヤト・コバヤシに死者の思いを伝え――ようと思ったのだが、今日は随分と忙しいな」
場当たり的な行動だから仕方ないが想定外のことが起こる。
特に相手が軍人のように思考が固まっているような者達ではなく、その場の感情で動く者達は読みにくい。
『ジュドー!!!!』
ガンダムMk-IIを操ってこちらに突き進むエル・ビアンノ。
ミソロギアのエル・ビアンノもそうだが、ジュドー・アーシタを慕っているが頭一つ飛び抜けているだけであって他の仲間にも心を砕き、仲間のために動く行動力もまた持ち合わせている……だからこそ――
「手が届く範囲で仲間を連れ去ろうとしているのに黙ってはいられない、か」
まぁ私が悪役なのはいつものことだが、こういう展開は煩わしい。
「ジュドー・アーシタ、聞かずともわかってはいるが……エル・ビアンノを始末したら――」
「ダメに決まってるだろ!!」
まぁ逆にとっとと始末してくれ、などと言われたら人生の中で1番驚く自信があるが。
さて、どう対処したもの――
『ジュドーとリィナを返せぇぇ!!』
うるさい。
必死なのはわかるが頭に響く。ただの必死な思いも精神攻撃の1種となり成りうるらしい。
少なくともアーシタ兄妹がこちらにいる以上はエル・ビアンノがガルダ級自体を攻撃することはできない。アーシタ兄妹の位置を特定するほどのニュータイプ能力はまだないからだ。
しかし、感情というのは時に思考回路を焼き、取り返しのつかないことを衝動的に行ってしまうものだ。信用に値しない。
とりあえずガルダ級からシルメリアを出して迎え撃つか。
「お、おい、今の振動は格納庫から――エルを殺す気なのか?!」
「心配せずとも私は相手が覆さぬ限り約束を違えない。ただ、追い返すか招き入れるか迷っているので時間を稼ぐだけだ」
「一緒に連れていくって言うのもアレだし、せっかく助けに来てくれたのに放って置いて帰れって言い難いよなぁ」
とジュドー・アーシタも頭を抱える。どうやら私の代わりに答えを提供してくれることは難しそうだ。
(誘拐に巻き込んでしまうのは申し訳ないし、アーガマの戦力がこれ以上減っちまうとビーチャ達も危ない。だからって帰れって言って帰るエルじゃないしなぁ)
「確かエル・ビアンノは家事ができたな」
「ああ、俺達の中じゃ家事ができるのはリィナとエルぐらいだが……なんでそんなこと知ってんだ?」
「それは後だ。ならエル・ビアンノも連れて行くか。お前達の滞在中の世話係として」
「世話係って」
「お前は検体として、リィナ・アーシタはお前に対して人質と価値があるため面倒を見るが、エル・ビアンノ特に必要がないが、連れて行くならそれ相応の労働をしてもらわないと、な。働かざる者食うべからず、だ」
「決める前にエルと話させてくれないか」
「いいだろう」