第四百四十九話
「ファーザー、めっちゃ強い」
「そっか、アレンパパが実戦なんて滅多にないから知らない子が居ても不思議じゃないか」
「訓練で相手してもらってるだろ」
「でもさー。あれって地球だよね?私達がここからシルメリアを動かすのに苦労してるのにぃ、アレンパパイはミソロギアから動かしてるんだよね?ありえなくない?」
アレンが操るシルメリアのカメラ映像をため息が漏れる。それも複数のプルシリーズから。
「ファーザー、マニュアル操作?」
「うげ、マニュアルって6機同時で?しかもミソロギアからだから私等が使ってる時より反応が鈍いはずなのに……エゲツナイ」
「私達とアレン総帥を比べるなど恐れ多い。しかし、腐るな。本来あの程度の者達の相手は我々がせねばならぬ。アレン総帥のお手を煩わせては我々の存在意義が失われよう。弛まぬ努力を期待する」
「言ってることは間違ってないけどさぁ。言い方が堅いよ」
「性分だ」
「同じ遺伝子で同じような教育環境なのに違いができるのは不思議だねぇ?」
「噂ではアレン総帥は我々のストレス軽減するために意図的に施す教育を微調整しているらしい」
「確かに自分と似た姉妹ばっかりなのは嫌になるよねー。そっか、だから偏りがあっても色々な姉妹がいるんだ」
など話しながらもプルシリーズは全員、映像から目を離さない。自分達の生みの親の戦いを目に焼き付けるために。
ただ、1つだけプルシリーズが集中できない要素があった。
それは――
「でも……このゾワゾワ感だけはどうにかして欲しいなー、なんて」
「アレンパピィの気配がバシバリ伝わってくるね」
「長距離からサイコミュを使っているのだから仕方ないとはわかっているが……こそばゆい」
当然ながらプルシリーズは須らくニュータイプである。しかもアレンを除くとトップクラスの。
故にミソロギアから地球という長距離で戦闘を繰り広げるレベルの強い思念波を使用している現在、その途中に位置する母艦級に乗るプルシリーズは等しくその強烈な思念波を受信してしまっているのだ。
その感覚はオールドタイプでもわかるように言えば、体中を鳥の羽で擽られているような感じである。後、たまに髪を洗っている時、背後に誰かがいるような気配を感じる時のような場合もある。もっとも個体によって差があるので一概には言えないが。
ちなみにアレン人形の近くにいるハヤトやジュドーなどはニュータイプレベルが足りていないため本人達が気づかない程度に心拍数が上がっているぐらいである。
「あ、引き上げるみたいだね。でもあの飛行機どうするの?連絡来てたっけ?」
「データ取りついでに今降りてるシルメリアを常駐させるらしい」
「それって大丈夫なの?補給もだけど連邦とかから襲われない?」
「それはそれでいいんだってさ」