第四百五十話
『父さん……』
『カツ……』
感動的な親子の再会を眺める。
なんとか成功したが、下手をすると時渡りのきっかけとなったソーラ・システムの照射を防いだ時よりも大変だった。
昔資料映像でみた祭りの露店の1つである金魚掬いをずぶ濡れでヨレヨレのポイでやらされているようだった……まぁ金魚掬いなどやったこと無いのだが。
あ、ハヤト・コバヤシがカツ・コバヤシを殴り飛ばした。愛情ゆえなんだろうがあまりやり過ぎると消えてしまうぞ。程々にな。
そういえば、この親子は養子縁組によるものらしい。よく他人であるにも関わらず思念が残ったものだと思う。
正直、親子関係というのは私にはわからないのでこれはこれで一般常識を知るにはいい機会か。
私は血の繋がりが大事だとは思わないが一般的には重要なはず。にも関わらず血の繋がらない親子でありながら思念を残している。よほどいい親子関係だったのだろう……思いっきり殴っていたが……まぁそれを受けてもカツ・コバヤシは嬉しそうである以上問題ないのだろう。
ふむ、私から見るとただの暴力に過ぎないのだが何か特別なものがあるのだろうか、それともカツ・コバヤシが特殊な性癖を持ち合わせているのか。
確かに私も罰を与えることは多々あるが、それは純粋な暴力ではなく、反省を促しながらの厳しい訓練を施す。
ただの暴力にも何かあるのだろうか。
そして予想に反して一度共鳴してしまえばカツ・コバヤシの思念は丈夫だった。このような貧弱な思念に共鳴などしようものなら一言二言程度で終わってしまうのではないかと考えていたが、現実は普通に会話し、殴られもしている。
やはり人の思いというのは一筋縄ではいかないのだと実感する。ここのところ私自身やハマーン、プルシリーズのデータではほぼ予想通りのものが返ってくるし、カミーユやジュドー達は本当の意味で実験体というわけではため深いデータは入手できていない。そういう意味ではフォウやロザミア、イーノなどのように強化処置を受けた者の治療から得たデータの方が面白い。
『父さん、母さんや皆はどうなの』
『フラウ達は元気にしているが、アーガマやラーディッシュは……』
どうやらカツ・コバヤシはあのアーガマと共に行動していたようだ。思念が弱過ぎて私が記憶を探ることができない程度にしか共鳴していないので面倒でしかたない……用が終わり次第共鳴深度を上げるか?
しかしラーディッシュはMS部隊共々全滅、アーガマは撃沈されていないがMS部隊はファ・ユイリィのみが健在で、カミーユ・ビダンは廃人化、それ以外は全滅しているはずだ。
つまり、カミーユ・ビダンを治療を名目に引き取れば新しいデータが手に入るかもしれない。
しかしカミーユ・ビダンとファ・ユイリィの2人はアーガマを降りてどこかで療養しているらしいがどうやら隠蔽工作されているようで足取りがつかめていない。残念だ。
ん?どこからか話が逸れた気が……まぁ問題はないか。