第四百五十一話
「カツに……息子に会わせてもらえて感謝する」
「なに、こちらも利があってのことだ。気にするな……それにしても……俗にいう幽霊などとは違って思い残すことがなくなったからと消えるわけではないのか」
カツ・コバヤシの思念は共鳴を行ったにも関わらず残っている……どころか――
「思念が強くなっているとは」
もしかすると死者の念は残心ではなく、残り火なのか?新たに燃料を焚べれば増幅のだろうか。
それならあの決戦で現れたララァの思念はアムロの思いが成長させたという可能性が出てきたな。
せっかくの希少サンプルだったのに確保しておきたかったと改めて思う。
「先程共鳴したからわかっていると思うが、害はない。むしろ危機に陥った時に一助となるだろう」
「……そうか」
とはいえ素質の差があるので精度のいい虫の知らせ程度だろうが、戦場に立つ指揮官には命をつなぐことになるかもしれない。
ふむ、オカルトな話だと考えていたが守護霊という概念が存在は思念であった可能性があるな。とするならもしかすると太古からニュータイプが……いや、ニュータイプこそがオールドタイプだった……大いに有り得るな。
いや、太古となれば未知が溢れた時代、そして徐々に未知が失われたことでニュータイプとしての感性が死に、今新たな宇宙という未知に挑んでいる時代が来たから再覚醒した。という可能性もあるな。ただこの仮説を立証するには時渡りで太古に行くか、宇宙を人類が制覇するほどの未来に行って検証するしかないので当面は見送りだ。
「ただし、健康の面ではなんの役にも立たないので気をつけるように。随分と荒れた飲み方をしているようだな。胃もやられているが何より肝臓が酷かったぞ」
まぁ息子が戦死したと聞けばそうなるのも知識的には理解できるが……それも治療カプセルで治り、カツ・コバヤシから直接遺言を聞いたことで(まだ思念が残っているのでアレンがいればまだ会話できるが)それも落ち着くだろう。
なんだったら希少サンプルであるし、こちらで調整した内臓に取り替えてもいいが。
ついでに言えばリィナ・アーシタの治療も完了した。ただし、まだ意識は回復していない。私が睡眠剤を投与しているのだから当然だ。
別に寝かしておかなければならないような状態ではないが、意識を取り戻せば兄妹喧嘩を始めるか、そうでなくとも騒がしくなるのは目に見えているのでその対策だ。
もっとも――――
「ジュドー、本当にいいの?!このままこの得体の知れない奴らについて行って!!」
「ああ、リィナも治療してくれたし、なんというか……怖い人達だとは思うけど、ネオ・ジオンより……いや、下手をしたらエゥーゴより信用できると思う」
「リィナのことは感謝するけど、ちょっと一緒に行動しただけで信用できるかどうかなんてわかるわけないでしょ!」
適当に鹵獲してきたエル・ビアンノが代わりに騒がしくしているのであまり意味がなかったかもしれない……いや、リィナ・アーシタが覚醒していた場合更に騒がしくなっていたか。