第四百五十四話
「ようこそ、母艦級1番艦へ」
「ちょっ?!なんであんたがここにいんのよ!!地球に残ってたじゃない!!」
驚いているエル・ビアンノの様子を見るにジュドー・アーシタ達は説明していないようだ……ああ、説明する本人達が半信半疑なのだから説明し難かったのか。ならば仕方ないか。
「リィナ・アーシタ。目が覚めたか」
「はい。治療をしていただき、ありがとうございます」
「気にするな。対価はきっちり払ってもらうから気にする必要はない」
そう言うと表情は変えずに緊張した雰囲気を発する。ふむ、こちらのリィナ・アーシタは年齢で言えば眼の前の彼女よりも年上ではあるがこれほど上手く感情を隠すことはしない。
警戒対象であるから……というだけではなさそうだが……それを探るのは後でいいか。
とりあえずレセプションルームに案内する。
その道中――「ハァ、やっぱり宇宙は落ち着くよなー」、「だよねー。重力があるのを忘れてMSから飛び降り掛けたもん」というジュドーとエルの和やかな会話、兄が不安そうな表情を浮かべていないので私が求めた『対価』は大したことがないのか、それともわかった上で能天気に考えているのか判断に迷っているリィナ、「ねぇ。なんか視線をいっぱい感じない?」という何かしらの気配を感じて不気味に感じているエルピー・プル……感じているのは間違いなくプルシリーズの視線だろう。
同一体であることは珍しくないプルシリーズでも、私が作り出したものではない自分達と似通った存在というのは気になるだろう。
「「おおーーーー、めっちゃ豪華!」」
母艦級のレセプションルームが使われる場合、要人を迎えることになるだろうことを想定しているので確かに見栄え良くしている。
もっともブランドにこだわる者達にはそれほど価値が無いだろう。全て私が製造したものなのだからブランド力などありはしない。前の世界ならMS由来のブランド力はあったが。
「戦闘で疲れているだろうから何か取ってくるといい。ここにあるものは全て無料だから好きなだけ食べるがいい」
「おお!マジで!サンキュー。腹減ってたんだ」
「あんたちっさいのに太っ腹ね!」
「エルさん!言葉が悪いですよ!」
喜んで並べた料理に向かっていく3人とは違い、顔色を悪くしているエルピー・プルに目をやる。
「うぅ、お腹空いてるけど視線が気になるよ~。美味しそうなのに~クレープもパフェもあるのに~」
さすがに哀れになりプルシリーズに意識を外すように指示を出した。
「あれ?突然なくなった?なんで?」
「混乱しているようだが、それの説明もしよう。とりあえずしばらくは視線を感じないだろう」
「わかった」
空腹に負けているのか素直にデザートコーナーに走っていった。