第四百五十五話
「では、まずミソロギアという組織を簡単に説明するとしよう」
各々思い思いに料理やドリンクを取って席につき、幾らか口に運んである程度腹を満たし、喉を潤したタイミングで告げる。
「今から話すことは受け入れがたいだろうが真実だ。まぁ疑ったところで扱いに変わりはないのでどちらでもいいが」
「勿体ぶってないで早く言いなさいよ」
「エルさん!先程から言葉が悪いですよ!ごめんなさい。アレンさん」
「気にすることはない。これからきっちり躾……教育する時間はある」
「え?!なんで私が!?」
「アーシタ兄妹は対価として私に付き合うことになる。その間、エル・ビアンノだけ何もしないつもりか?」
「うぐ」
「今までは環境のせいにしていたかもしれないが、最低限の教養を持たねば将来困ることになるぞ」
「わ、わかったわよ」
別に放置でもいいのだが、何もせずにいると不平不満を抱かれても面倒なので、そんなことを感じさせないほど疲れさせてしまえば問題はないだろう。
「さて、本題だが、このミソロギアという組織は現在コロニー2基を連結して本拠地とし、この艦隊とMSを100機以上保有している武装組織で、その目的は……特にないが、強いて言えば私個人の持ち物であるから研究開発がその目的と言えるか」
「えっと……あのMSもこの船も周りの船も全部あんたの持ち物って……本当に?」
「ああ、ちなみにこれは前フリでしかない。本当に疑ってしまう話はこれからだ」
「十分信じられない話なんだけどな」
「あんたってお金持ちなのねー」
コロニーは拾ったものだしMSも自作、生活物資もほとんど自給自足、そしてこちらの通貨や株などは保有していないので金持ちという言葉は正確ではないと思うが面倒なので否定しないでおく。
「そして私達ミソロギアはこの世界とは別の世界からやってきた存在だ」
「………………?」
ジュドー達は揃ってニュータイプでなくとも察することができるぐらいに意味がわからないという表情を浮かべ、互いに目を合わせて意思疎通を図ったが、やはり揃って意味がわからないとしか伝わらず、こちらに向いた。
「理解ができないというのはよく分かる。私自身も他者から聞いたならさっくり解剖して脳が詰まっているか確認するぐらいには荒唐無稽な話だ」
「そこまでは……思ってないこともないかもしれない」
「だが、事実だ。証拠の1つを見せるとしよう。……ああ、その前にエルピー・プル」
「な、なによ?」
「心を強く保て、自分は自分だ」
「そんなの当たり前でしょ?」
「そう、当たり前だな。…………では、入ってこい」
私の声掛けとほぼ同時にドアが開きぞろぞろと入ってくる。
「え、な、なんで――」
それが目に入ると瞬く間に精神が揺らぐのを感じる。
「初めましてと言っておこう。この世界の姉妹よ」
「歓迎するよー」
「仲良くしようね。でもアレン父に敵対行動はダメだよ?お仕置きだよ?やっちゃうよ?」
などなど概ね好意的な声を掛けるプルシリーズ。
しかし――
「プ、プルと同じ顔だ」
混迷する中でジュドーが代表するように思いを言葉とする。
「プルシリーズ。私が前の世界で生み出したクローンだ」
自分の思いすらもわからないぐらいに混乱している4人に続けて説明する。
「私はMSや宇宙船なども開発しているが、本職はニュータイプとクローンを研究で、その成果がプルシリーズだ。そして、最初に作り上げたプルシリーズの名はエルピー・プル……お前と同じ名だ。残念ながらこの艦に乗っていないので会わせるのは後日になる。楽しみにしているといい」
「楽しみじゃない!!」
「それほど神経質にならなくてもプルシリーズは厳密にはお前とは違った遺伝子で産めれている。ただ、なぜか似た性格、似た容姿になっているだけだ」
「え、じゃあこれだけ似てるのに兄妹でもないの?」
「ああ、プルシリーズはミネバ・ラオ・ザビのDNAが使われている。元々はネオ・ジオンの君主の影武者とするのが目的だったがニュータイプの素質があることが判明して、それからは私が便利に使っている」