第四百五十六話
「あんた……そんなことしていいと思ってんの?!」
割と常識人であるエル・ビアンノが食って掛かって来る。それよりも常識人であるリィナも上手く隠しているがエル・ビアンノ以上に思うところがあるようだ。
こういう問答は今更すぎる内容で面倒なのだが……仕方ない。いくらか付き合って、納得できなければ帰す時まで監禁でもいいだろう。
「問うと言うのはわからないから問うのだ。わかりきったことを問うのは無駄な時間だ」
少なくともクローンが1体2体ではなく10体以上見せたのだから思うところがあると考える方がおかしい。
「人の命をなんだと思ってんのよ!」
「命は平等だ。それは動物であろうが人間であろうがクローンの命であろうが平等だ。そして命の価値など個人で変動するので鑑みるに値しない」
「そんなこと――」
「でなければ、エル・ビアンノ。お前が殺してきた者達と同じようにこの場でジュドーかリィナを殺してみるといい。それができるなら命の価値が個人ではなく、不変であるという可能性を考えてやろう」
そう言って銃を渡してやるが受け取ろうとしない。
「でも人工的に人を生み出すなんて間違ってます!」
今度はリィナの番らしい。
「間違っているという根拠が自然にそぐわない、神の領域を荒らす所業というもので間違いないか」
リィナが頷いたので続ける……ハァ、似たようなことを過去に何度もしてきたので飽きているのだがな。
「自然にそぐわないというなら人工臓器や薬学、更には人工の大地であるコロニーまで作っておいて今更だろう。神の領域など神の存在を立証してから話してもらおうか。それに神がいたとして本当に生命の誕生が神の領域であるかどうかなどわかりはしない。更にコロニーという限られた世界で生きていく上では社会も文化も宗教も関係はない。我々だけで生きていくなら問題など一般社会で起こる事件事故程度のものしか存在しない」
そもそも人間が再現できることが神の領域だと思うあたりどうかしている。と締めくくった。
今となってはタイムトラベルか世界の壁を超えて平行世界を体験してしまえば余計にその思いは強くなる。それは経験してみないと理解できないだろうが、な。
「さて、エルピー・プル」
「な、何」
「少しうちのプルシリーズと話すといい。ハマーンから聞いたがこちらでもプルシリーズが存在しているのは確認してある。違いはそれなりにあるがこのような存在に慣れておいて損はないはずだ」
「私以外にも私が――」
「違うと言ったはずだ。お前はお前であり、他は姉妹や双子の延長線でしかない。それを知るためにもプルシリーズと話してくるといい。多少心の整理がつくだろう。私達が移動するときは声を掛けるから気兼ねなく話すといい。なんだったら一緒に遊ぶだけでもいいぞ」
「………………うん、わかった」