第四百六十話
「毎日身体スキャンを行うが既にガルダ級でしたが……ああ、エル・ビアンノはまだだったな。流れを説明する上で受けてもらおう」
「もしかして身体全部見られるんじゃ……」
「その通りだが、気にすることはない。女性が気にするようなデータは会った瞬間から取得しているので身体スキャンは関係ない」
「そっかー、なら安心だね……なんて言うと思った?!このスットコドッコイ!」
「心配せずともプライバシーは守るので細かいことは気にするな」
「絶賛プライバシーが侵害されてるんだけど?!」
話が進まないのでテンタクルで縛り上げてとっととスキャンを開始する。
「あまり騒ぐと麻酔射つぞ」
と言ったら大人しくしたのでパパッと終わらせる。
「体験した通り大した時間は必要ない……ああ、エル・ビアンノ。少し虫歯があるのでこことここの歯にこれを詰めて置くといい。勝手に治療され、修復もされる」
「なにそれ凄い。歯医者って嫌いなんだけどこれで治るの?!あんたデリカシーはないけど凄いね!」
予想外なことで喜んで機嫌が治ったみたいだ。一々面倒だったのでそのままでいてほしい……無理だろうが。
「皆、映像見ているだけみたいに見えるけど?それに内容もバラバラよね」
「検体にとってもそうとしか感じないだろうな。しかし、この映像は検体にそうとは気づかない程度に感情の揺れを生み出し、静めることを交互に行うことで感情的硬直を抑制しつつニュータイプ能力を伸ばしている」
「そうだったんだー」
「受けてる本人達が知らないのか」
「そう仕向けたわけではないがプルシリーズは研究に関してほとんど興味を示すことはないな」
「これぞ役割分担!」
「好きな人がやればいい適材適所!」
プルシリーズ達が言っていることは間違っていないのでその通りだと頷いて肯定すると私達を見て呆れたようにエル・ビアンノが笑う。
「……あんた達、思ったより自由ね」
「趣を重視した組織だからな」
「でもこれ、見た目以上に疲れるんだよ。ほら皆結構顔に汗出てるでしょ」
「本当ですね。結構負担があるんですか?」
「あれの疲労は時速18kmで走るのと同等程度だな」
「え?映像見ているだけですよね?」
「感情の揺れを検知、映像の切り替えの管理などはサイコミュで行われているため若干疲労する」
「時速18kmで走るって若干じゃ済まないと思うんだけど」
「プルシリーズは身体能力を強化されているからその程度ではウォーミングアップ程度だ。それにエルピー・プル、原色の映像を切り替えながら長時間見せられたことはなかったか」
「あったよ。あれ、段々気持ち悪くなって途中から何考えているかわからなくなる嫌なやつ」
「それも感情を揺さぶりを加える同系統の訓練となる。だが、その訓練は度が過ぎれば精神崩壊、もしくは直前まで追い込んで刷り込みを行うことで洗脳も可能。フラナガン機関で重用されていた技術なんだが、連邦でも同じようなことをしていると聞いている」
「酷い」
非人道的な行いも被害を減らすための土台なのだが、一般人は知らずに生きていればいい現実ではあるな。
「とりあえず、これは感応能力が高められ、サイコミュの扱いが上手くなるがすごく疲れるというだけの動画視聴機だと思えばいい。やり過ぎたら後が大変だが、そのあたりはこちらで調整するので問題はない」
もっともサイコミュの扱いに関しては系統が違うため、対象はミソロギアのサイコミュのみだがな。