第四百六十一話
「本当にこれだけなの?」
「思ったより普通だったな」
「酷い扱いをされるとは思っていませんでしたが、これぐらいなら……」
「私もこんな訓練がよかった!」
と一通りデータ取りと訓練の内容説明を終えるとジュドー・アーシタ一行は安心したようで表情が明るくなった。
「この内容は初歩だからな。エルピー・プルが本格的に受けるならまずは手術からだな」
「いきなりマッドさが全開?!」
「エルピー・プルも随分調整されているようだが通常の人間の枠からははみ出していない。おそらく反抗を恐れてのことだろうが、勿体ない」
「勿体ないって、あんたね」
「検体の生存率は経験と能力と運で決まる。生存率は上げておいて損はない」
「くっ、このマッド、嫌な言い回しを」
「事実だからな」
「それはそうでしょうけどおぉ?!」
(なあ、さっきから思ってたけどエルとアレンの相性って悪いよな)
(相性というよりエルさんをからかって遊んでる感じかな)
(なるほど、エルは猫じゃらしで遊ばれてるネコか)
(なんだったらエル・ビアンノにネコミミをつけようか?)
「「うお(きゃっ)?!」」
「どうしたのジュドー?!」
「え?アレンがエルにネコミミつけるって言ったの聞こえなかったのか?!」
「そんなの聞こえなかったよ」
「指向性を強めた声(厳密にはスピーカー)だからアーシタ兄妹以外には聞こえていない」
「なんて技術の無駄遣い?!」
「なんで私にネコミミをつけんのよ!」
「あー、この前1844が生やしてたね。ネコミミ。ついでに尻尾も。ミミはピコピコ動いて可愛かったけど、尻尾はウロウロされて鬱陶しかったなぁ」
「……あの、ネコミミって、まさか本物を?」
「え、偽物に価値あるの?」
「マジでガチなネコミミなのね」
「他にもヒゲとか肉球とか、イヌとかキツネとか孔雀の飾り羽とかハシビロコウの嘴とかカメレオンの目とか亀の甲羅とかもあるね。後で画像見せてあげる」
「いや、えっと、ちょっと……」
怖いもの見たさで見たくないわけではないが、本当に見たいかといえばどうだろう?でも勧めているプルシリーズは好意であるため断りづらい、という心境が手にとるようにわかる。
そしてなかなか混乱しているな。まぁ狙ったのだから当然ではある。
これから自由時間になるのでプルシリーズと少しでも馴染ませなければ居心地が悪い時間が続くことになる。
威圧しないように警戒ではなく監視を命令しているからいつもと変わらない態度でプルシリーズが対応することになっているが、ミソロギアの防衛を重視することやレナスやシルメリアなどのMAを主軸にすることを前提とし、戦闘経験を積ませることから比較的若い個体が多い。
プルシリーズに外部の人間と関係が正常に築けるのか、ジャミトフやカミーユなどとの関わりを見ると問題はないように見えるが――あれ等が一般的かと言われたらNoとしか言えないし、あれ等と比べるとジュドー・アーシタ達は子供だからな。どういう刺激を受けるか要注意だ。
まさかエルピー・プルと同じように絆されて反乱なんて目も当てれない……一応戦力拡充しておくか。
プルシリーズ同士の殺し合いなんて見たくは……研究者としてはあるが、創造者としてはあまり見たくはないな。まぁ殺し合いになる前に自爆コードを入れれば終わりではあるが……できれば終わりも有意義であって欲しいと思うのは傲慢か。