第四百六十三話
「そもそも連邦は完全な形で降すのは不可能だと以前教えたはずだ」
「わかっている」
「それならコロニー落としなど無意味だ。地球を潰すぐらいしなければ無駄に反感を買うだけで――いや、そうか、勝利が目前と勘違いした者達が早くも派閥争いが本格化し始めたのか」
「そのとおりだ。ハァ……愚物共が騒ぎに騒いでいる。今なら連邦を降せすのも容易いと楽観視している者達と勝ち筋が視えたと勘違いして私を引きずり降ろそうとする者達とどれだけの利を毟り取れるかと妄想を描く者……それらが入り乱れた結果、情報収集すらままならん」
「田舎者が多いから都会に出て、うっかり成功してしまって有頂天状態と言ったところか」
「随分俗っぽさが強いが……否定できる要素がない」
こうなるとハマーン閣下がコロニー落としを却下すると連邦と直接会合した後のため、連邦に取り込まれた、地球に降りて弱気になったなどとでっち上げて責め立てる可能性が高い。
前の世界とは違ってこちらのネオ・ジオンは随分タカ派に寄っているのでほぼ間違いないだろう。
「ふむ、今回随分ハマーン閣下には借りができてしまったので少々返しておきたいと思っていたが……少し私達が動くか」
「何をするつもりだ」
「タカ派が調子に乗っているのは弱った敵しか存在しないからだろう。ならば私達がそれを買って出ようではないか」
「あんな愚昧共ではあるが一応は味方だから減らされては困るのだが」
「もちろん分かっている。だから私達が狙うのは――コンペイトウだ」
「……なるほど、ネオ・ジオンの敵として既に力不足なエゥーゴの主要拠点であるコンペイトウを叩いて占拠、そしてネオ・ジオンに警戒させて動きを封じるか」
「その通り。我々の武威を示し、ぜひともご近所さんのネオ・ジオンには警戒してもらいたいものだ。戦う相手もコンペイトウのエゥーゴ相手なら問題はないだろう」
「しかし、いいのか大気圏に戦力を張り付けたままでコンペイトウの占拠など更に戦力を分散させて、万が一コロニーを攻撃されて防ぐことができるのか」
「問題ない。大気圏内とは違い、MS10機ほど投入すれば大体の掃除は終わるだろうし、制圧作業はこの人形を使えば難しくない。占拠後はミソロギアそのものをコンペイトウと合流させれば戦力の分散にはならない」
コロニーの防御性能の低さが気になっていたが、コンペイトウを手に入れる事ができれば盾としての機能を持たせることができるかもしれない。
それに上手く行けば生産設備や研究開発設備も確保できる可能性がある。
ちょっと手を伸ばし過ぎている感は否めないが、手に入る時に手に入れておくのはジャンカーとしては至極当然の思考だ。
……まぁハマーンとジャミトフに怒られる未来が視えているが、甘んじて受けるとしよう。
「それで、どうだろうか」
「そう……だな。いいだろう。ただし条件がある」
「伺おう」
「なるべく捕虜にして欲しい」
「全員となると面倒ではあるが……まぁなんとかしよう」
(誰も全員とは言ってないが……それよりもなんとかなるのか?いや、あの戦力ならありうるのか)
「では、頼むとしようか。こちらからは何かすることはないか」
「タカ派を少しの間抑えておいてくれ。それだけだ」