第四百六十七話
はにゃーんがアッティスに四苦八苦している間に母艦級とMD艦10隻は隠れる素振りもなく真っ直ぐ直進してコンペイトウへ進んだ。
故にその情報はコンペイトウに立て籠もるエゥーゴにももちろん、ネオ・ジオンや連邦、果てはアナハイムにも行き渡った。
地球で大暴れするネオ・ジオンと何らかの繋がりがあるであろう軍事組織は注目の的となっている中で突然艦隊が動き出したので大騒ぎとなった。
あまりにも堂々と進むために罠ではないかと警戒されたりもしたが、結局罠であろうがなんであろうが迎え撃つしか選択肢はない。
宇宙において籠城という戦術は通用しないことの方が多く、そもそもできない。
現在正規軍ではない軍事組織はミソロギアを除いて存在せず、そして正規軍は防衛戦においては大きな足枷がある。
それはコロニーにしろ要塞にしろ民間人が多く存在するということだ。
コロニーはともかく要塞に民間人?と思うかもしれないが、表向き、本当に表向きはここのところ戦争状態ではない。デラーズ・フリートはテロ、エゥーゴとティターンズは派閥争い(度が過ぎている)であり、緊迫した情勢ではあっても平穏(核が爆発したり毒ガスが蔓延したりしているが表面上は)であり、地球連邦全体で言えば軍縮中であり、だからこそ兵站には多くの民間企業が携わっている。
特に宇宙要塞ともなればその兵站は地上基地よりも膨大となり、その要塞内に民間人がいない時など存在しないのだ。
そして平時の際に……戦時でもだが、民間人の被害者を出した時の世論の反応は重度のアレルギー症状のようなもので、上も下も関係なく、それに関わった者達に減給と瑕疵が与えられ、望ましいものではない。
「全軍を持って迎撃せよ。連邦から供与されたものも出せ。正体不明の敵ではあるがあの堕天使相手ならば手加減など考えるな」
コンペイトウの司令官は地球連邦、カラバやネオ・ジオンの諜報員などから得た情報で天使のような姿のMSを堕天使と呼称し、その戦闘能力も手に入れていたし、編成が大気圏に駐留する艦隊のちょうど半分であるため戦力はだいたい把握できている。
数だけでいえば圧倒的にコンペイトウ駐屯軍の方が多いが、パイロットの質とMSの性能は劣ると判断し、出し惜しみなど愚の骨頂と、最初からフルスクランブルの命令を出した。
しかも、本来ならコンペイトウから打って出ることが常道だが、念には念を入れてコンペイトウの防衛圏内まで使う予定と徹底した総力戦を展開した。
「まさかここまで徹底した防衛戦を展開されるなんて思いもしなかったな」
シローはどうしたものかと後頭部を掻いた。
「いくら地球で2個艦隊が暴れたとはいえ、まだこれほど警戒されるほどの手札を見せていないはずなんだが」
「よほど優れた司令官なのか、それとも度が過ぎた臆病者か……判断に迷います」
2人はすっかりミソロギアに、アレンの感覚に染まってしまっているが、2個艦隊も動員できる正体不明の軍事組織など警戒して当たり前、しかもその戦力が明らかに異常な戦いを見せているのだから当然なのだが……ミソロギアでも常識人枠のシローやイリアすらも感覚が狂い始めてしまっていた。