第四百六十九話
「あれ?あの機体ってリ・ガズィだよね?」
「みたいだな」
「前の世界だともっと後の機体だよねー、あれ」
「ああ、ジェガンといいリ・ガズィといい不思議な話だ」
「でも私達にはこの程度――」
「――関係ありませんね」
――――ファンネル――――
パノプリアの第1格納庫のハッチが開かれ、ファンネルが解き放たれる。
「でも殺さないようにしろ、なんて難しいこと言ってくれるよねー」
「私達は数こそ使えても操作には他には劣るからな」
ファンネルの数は、それぞれのパノプリアから200基、計400基が宙を舞う。
数こそ十分ではあるが、元々パノプリアのファンネルは火力重視の砲撃仕様ではなく通常のファンネル、つまり弾幕仕様であるため、1基でMS1機を撃破するには時間が掛かり、短時間で終わらせるならMS1機に対して5~8基が推奨されているので補えていると言えるほどではない……が、2機のMSで補う数としては破格だ。
「さあ――」
「――踊りなさい」
コンペイトウ駐屯軍にファンネルが襲いかかる。
「あのデカブツからなんか出たぞ。ミサイルか?それにしては小さいが」
「おい!あれは全部ファンネルとか言う遠隔操作できるビーム砲だ!気をつけろ!」
「は?なんだそれは?!」
ただ、アレン達にとって1つだけ誤算があった。
前の時代ではアレンがファンネルを多用した関係で知名度が高かったファンネルだが、この世界ではファンネルを本格使用しているのはファンネルの原型であるエルメスのビットとキュベレイぐらいである。
エルメスは数が少ない上に、戦闘データそのものも多くなく、更にはジオン公国が念入りに秘匿したことで情報は少なく、キュベレイに関しては宰相であるハマーンの搭乗機なのだからその秘匿レベルは言わずと知れる。
つまりほとんどの者が知らない兵器であるため一般兵にまで浸透しておらず、対抗戦術すら満足に練られていないのだ。
むしろ、この場にファンネルの存在を知っている、もしくはファンネルのあり方を察した者がいたのは不幸中の幸いと言える。
ただし、それは情報がないと10の被害となるのが9になる程度の差ではあるが。
「こ、こんなのどこに躱せって――?!」
取り囲まれ、頭部、脚部、腕部、武装と念入りにビームが貫き――
「よし、3基目――って、おい?!あのデカブツからまた出てきたぞ?!」
数に利があるコンペイトウ駐屯軍がファンネルを順調に撃破していたが、それを無にするようにパノプリアから撃破された分だけファンネルが放たれ、再び踊りを強要する。
「くそ!操縦不可能!救助を!!」
「助けてくれ!!死にたくない!!」
「せ、生命維持装置が故障!は、早く助けて!!」
そして宙で残骸と化したMSの中でパイロット達はミノフスキー粒子で届かぬ通信で救いの声を発する。