第四百七十話
「高機動型か~、早く全機あれにならないかなぁ」
「配備を早くして欲しいのは同意だけど、全機ってのは無理だよ。高速化したせいで未来予知めっちゃ大変じゃん。若い娘達には普通のレナスじゃないと操るのは難しいってば。証拠に今回持ってきてる高機動型を操ってるのは上位ナンバーだけだし」
今回はミソロギアが主体として攻略作戦を行った経験が少なく、その上宇宙要塞を攻めるには母艦級1隻と少数であるため、できて間もない高機動型レナスを投入し、本来なら優先的にキュベレイシリーズのパイロットに配置される上位ナンバーが多く編成されている。
「それにしても開幕ビーム危なかったね」
「そうだね。この艦、重要区画以外Iフィールド張られてないし」
あまりに巨大な船体のせいでIフィールドが安定せず、妥協案として船内の重要区画のみIフィールドが張られている。
戦闘配置の際は全乗組員は中央ブロックに配置され、メガランチャーの直撃を受けたところで被害は知れている。だが――
「当たったら間違いなく娯楽施設が壊れちゃうからね」
「まだ全部回ってもないから壊したら恨んでやるんだから!」
充実した娯楽施設を内包する母艦級ではあるが、それらが重要かどうかというともちろん重要ではないため、Iフィールド対象外だ。
ちなみに技術的に難しいのは確かだが、プルシリーズに緊張感を持たせることも狙っている。
『宇宙要塞防衛網からミサイル発射を確認、迎撃を』
MS部隊の苦戦を見て取ったコンペイトウの指揮官は援護の指示を出した。
前線で暴れるパノプリアに波状攻撃を仕掛け、ファンネルの消耗を誘い、更には意識を逸らせる目的で母艦級にもミサイルは放った。
「さて、お仕事の時間だね」
「ま、私達は気楽なもんだけど。観測班とか未来予知班とかメガ・ランチャーからコンペイトウのビーム砲とかレーザー砲まで警戒しなくちゃならないんだし」
本当に戦闘中なのか疑いたくなるような気楽な会話をしながらもヘッドギアを被り、シートに座る。
「サイコミュシステム起動確認、リンクシステムも異常なし」
「こちらも同じく」
「お掃除の時間だよ!」
母艦級から次々とファンネルが展開され、その数は1000を超え、ミサイルを迎撃していく。
「触手班、破片チェック怠っちゃだめだよ!ミサイルよりもそっちの方が危ないんだから!」
ミサイルが母艦級に届くなど誰も思っていない。しかし、ミサイルを迎撃したときに生まれるデブリは高速で、装甲に当たるなら問題ないがスラスターにでも当たって損傷しては戦闘に差し障る。
なので母艦級からファンネルが放出すると同時に触手も伸ばしたのだが、それを観測したコンペイトウ司令部は――
「おい、あれは本当に人間の兵器なのだな。宇宙人の侵略ではないのだな」
「敵が使っている兵器の一部がネオ・ジオンの宰相、ハマーン・カーンの愛機であるキュベレイの系統であることからネオ・ジオンと何らかの関わりがある部隊のはず……です……が……」
司令官の疑問にはっきりとした回答ができなかった副司令官だったが、それも仕方ないだろう。
規格外の大型艦艇だけでも色々おかしいのに、まさかメガ・ランチャーの奇襲を防ぐではなく回避されるなどと思いもしないし、次は意味の分からないファンネル量で、追加でにょろにょろにょろと触手が生えてミサイルの破片を弾き返しているその姿は、どこからどう見ても普通ではないのだから。