第四百七十二話
「……MSはまだあるか」
「出撃しているものが全てです」
「艦艇は」
「コロンブス級を出したところで何の役にも立ちますまい」
「砲台は」
「あの巨大キュベレイに突破を許して33%は破壊されました。ご丁寧に今のところ唯一有効打でと確認できているレーザー砲は全滅。何よりMS部隊も既に250機を切っています」
陣形が崩れた瞬間に余裕ができたパノプリアは前面のMSをファンネルで薙ぎ払い、追従していたキュベレイ・ストラティオティスが切り込み、一気にコンペイトウ付近まで近づき、配置されていた砲台を破壊すと悠々とパノプリアが戦う場所まで後退していった。
そのままコンペイトウを落とすことは無理でも防衛網をかなり削ることができただろうになぜ後退したのか疑問は残るが退いた事実を前に深くは考えることはしなかった。
その代わりと言ってはなんだが、母艦級を強襲した可変MSで構成されていた部隊は全滅し、迎撃に出ていたキュベレイ・ストラティオティス達は母艦級に戻り補給、そして代わって護衛をしていたキュベレイ・ストラティオティスやレナスが前線へ投入され、コンペイトウ駐屯軍の被害は拡大の一途を辿っている。
「……コロンブス級を砲台へと改装するか」
「時間が足りないと思われますが……一応手配しておきます」
「うむ。しかし、あのMAに続いてMSの方も化け物だとはな……ネオ・ジオンが開発したものではないのかもしれんな」
「ええ、ネオ・ジオンにこれほどのMS、MAをこれだけの量を用意できるのでしたらもっと違った行動を示すでしょう」
「今頃コンペイトウどころかルナツーも失っているだろうな。とはいえ、目的が何なのか……勧告の類はないんだったな」
「はい。そう言ったものはありません。ネオ・ジオンの犯行声明もございません」
「一体何を目的で――」
「無論、私達の目的はこのコンペイトウをいただくことだが」
さすがは宇宙要塞の司令室。
現場からは遠のいた後方勤務であるにも関わらず、素早い動きで銃を取り出し、声がした方へと向け、見覚えの無い人物であることがわかり引き金を引く。
「よく訓練されている。反応はいいし、射撃の腕前もいい。弾は全て直撃、それに手足を狙って無力化を図るのも悪くない。まぁ私には何の意味も為さないが」
おかげで跳弾が出なくて済んだがな、と言って触手から銃弾がポロポロポロと溢れる。
対象がまだ無傷だとわかり、唖然とする者がいる中で優秀な者は更に引き金を引きつつも侵入者を要塞内に知らせるべく通信機に走ったり、火力が足りないと判断し、重火器が収まる武器庫に走る者など色々な反応を見せる。
しかし、それも長続きはしなかった。
「判断は間違っていない」
「しかし」
「私から逃れられると思うのは浅はかだ」
「速やかに降伏してもらえると手間が減るのだが」
「どうかな?」
いつの間に司令室に侵入したのか、5人の見知らぬ人物が包囲していた。
見知らぬ人物ではあるが、見たことがある……いや、厳密には同じ人物が5人で包囲しているのだ。