第四百七十三話
広大な宇宙空間を全て監視するのは難しい。
それが人間サイズであり、更に戦闘中でミノフスキー粒子が散布されているとなれば尚更だ。
中央突破して防衛網の破壊を行ったキュベレイ・ストラティオティスに張り付いていたアレン人形はタイミングを見計らい、宇宙を泳ぎ、コンペイトウに侵入させた……というよりもキュベレイ・ストラティオティスを突っ込ませたのはこれが狙いだ。
宇宙にしろ地上にしろ要塞や基地と言われるほど大規模になれば内部構造を大きく変更するのは時間も労力も資源も要する。仮にも平時であったのだからそんな無駄な予算が割かれることはない。何が言いたいかというと、つまり内部構造はジオン公国のソロモンと呼ばれていた頃と何ら変わっていないのだ
というわけでハマーン閣下から提供された情報と前の世界の情報とすり合わせたので構造は把握しているため要所を順次抑えていく。
その1つが司令室なわけだ。
「宇宙空間は素晴らしい。雑菌を気にせず人を捌くことができる」
優秀な者ほど迷いがなく、反応が早い。
才能を愛する私としては心が痛むが、だからこそ真っ先に対処せねばならない。
この前と同じようにテンタクルでヒートモードで腕や足を切り落としていくが治療は慌てる必要がないのは気が楽でいい。
「無駄な抵抗はやめ、大人しく降伏するといい。命は保証するし、そこで捌いた者達の治療も請け負おうし、ここにいる者達だけではなく、戦場にいる者達も含めて保証しよう」
「突然攻めてきた者達の言葉を信用すると思うのか」
「自分の命を賭けて情報を引き出そうとする姿勢は尊敬に値するので今回は咎めないが、実りのある問いかけをするように」
こういうシチュエーションでは同じ内容の会話が多くて面倒だ。
「判断に必要な情報を与えよう。重火器を置く兵器庫、通信室、食堂、医療室、生命維持装置、核格納庫は既に私が抑えた。カメラで確認してみるといい」
オペレーターがチラッと司令官を見ると頷いて答えてモニタの映像が切り替わり、別のアレン人形が確認できた。
それと同時にこの場にいる者達の顔色が青くなる。
まぁ攻撃を仕掛けてきた者達が核を手にしたら恐ろしくもなるだろう。
使う気があるなら持ってくることも可能だったのだが、そんなことは知る由もない。