第四百七十五話
「やっと終わったー」
ジムIIIの顔面を握り潰して疲れた声で終わりを告げる。
コンペイトウから出撃したMSは全て無力化され、宙を漂い、砲台もアレン人形に抑えられたことで沈黙、更にはミノフスキー粒子散布も止み、その代わりにと悲壮感漂う救助を願う通信が飛び交う。
「まさか誰も逃げずに最後の1機まで戦い続けるとは思いませんでしたね」
「弱いんだからとっとと降伏してくれたらいいのに!!」
コンペイトウの司令室が制圧されたことで指揮系統が混乱し、更にはプルシリーズの容赦のない戦闘っぷりに逃げたら撃たれるという恐怖のため戦うことを選ぶしかなかっただけである。
「しかもまだ生きてる味方が乗ってるMSの残骸を壁にするなんて厄介なことをしてくれましたし」
「あー、それ、ニュータイプじゃないとわからないから仕方ないんじゃない?」
「なるほど、そうじゃないとさすがに味方が生きてるのに逃げ込んだり……しないよね?」
「いや、普通にやるんじゃないかな。己の命が1番大事でしょ」
「えー、そうなの?私は皆も私と同じぐらい大事だよ!」
「私だってそうだけど、外の人は違うでしょ。ほらカミーユとか」
「そうだね。カミーユはフォウ達の方が大事だよね」
「ところでコンペイトウの制圧はどうなっているのかな。制圧完了の連絡はないけど」
『こちらはまだ制圧できていないがMS隊が壊滅した映像を流しているので戦意を失ってきているのでもう少しだ』
と連絡したわけでもないがアレンから共鳴で現状を知らされる。
コンペイトウはコロニーより一回り小さい程度の宇宙要塞で、岩盤などが存在するためコロニーほどの人口はいないが、それでも万単位の人間を内包している。
それをアレン人形20体で制圧しようとなれば時間が必要なのは当然ではあるのだが、コロニーと違ってコンペイトウは7割は軍属なので余計に時間が掛かる。
「援護した方がいいでしょうか」
『なら制圧済みの区画に転がしている人間達を回収、治療ポッドに入れておいてもらおうか』
「了解しました」
すぐにシローが部隊を編成(とは言ってもAIが勝手に白兵戦が得意なプルシリーズを選抜するのだが)してコンペイトウを本格的に占拠していく。
「ハマーン閣下。コンペイトウの制圧は今終わった」
「……話したのは5日前だったと思うのだが」
「翌日には動けない軍は軍ではなく軍を語っている烏合の衆だろう。それに相手の戦力も決戦で削れ、ベテランパイロットが減っていたようだから手間といえば全員捕虜にすることの方が大変だった」
「まさか本当に全員捕虜にしたのか」
「もちろん。言葉を濁すことはあっても言ったからに実現させるのが私の信条だ。ところでいつ引き取って貰えるかな。さすがに万を超える人間を養い続けるのは大変だ。主に食事の準備が」
正確には食事そのものは機械が準備することでなんとか回すことができるが配ったり治療が終わっていない者達への配慮が煩わしい。
母艦級を空にしたところで500人しかいない。万を超える人間の世話を500人で世話をするというのは到底無理な話だ。
抵抗の意思が無い者を優先的に治療して労働力として使っているが、それでも足りない。
「わかった。早急に手配しよう。しかし連邦との折衝もしておく必要があるか、誰に渡りをつけるか――」