第四百七十八話
<大忙しのコンペイトウ>
「善良なる捕虜の皆さん!今日も頑張ってスクラップを回収しましょう!」
「私達の手を煩わせたら問答無用で連帯責任でお仕置き部屋行きですからね!」
「その代わりノルマ以上働いた方には高待遇を保証します」
「タバコに、お食事に、個室に、ドラッグに、テレビ、好きなもの選び放題ですよ~」
核パルスエンジンの輸送と取り付けの間にアレンより課せられたコンペイトウの任務がある。
それはミソロギアでは戦闘後のお決まりとも言えるデブリの回収だ。
しかし、エゥーゴとティターンズ、エゥーゴとネオ・ジオンの戦いを経てコンペイトウ周辺こそ活動の障害となるので掃除がされていたが、宙域となると勝ったのに負けたような状態のエゥーゴにそんな余裕がなく、多くのデブリが放置されていた。更には300を超えるMSがデブリと化し、山のように発射されたミサイルも加わってゴミ(宝)の山となっている。
これを見過ごすわけがなく、可能な限り全力で回収するように指示されている。
その可能な限りというのは思考を読んだ上で反抗の意思がある捕虜達まで動員することを決定した。
「さあ、本日も!」
「「「1人はみんなのために!みんなは1人のために頑張りましょう!」」」
プルシリーズの明るい掛け声とは裏腹に作業員となった捕虜達の空気は最悪の一言である。
反抗的な者達はもちろんだが、流れに身を任せている中立的な者達までも険悪な雰囲気を醸し出している。それは反抗的な者達の勝手な行動で自分達まで巻き込まれてお仕置き部屋で酷い目にあっているためだ。
プルシリーズ基準のお仕置き部屋なので一般人どころか軍人ですら拷問レベルなので巻き込まれたとあっては空気が悪くなっても仕方ないだろう。
「それにしても、この1人はみんなのために!みんなは1人のためにって言葉、わざわざ言わないといけないことなのかな。普通のことだよね?」
「だよねぇ」
「それはほら、みんなというのは組織内のことだから。彼らは私達の組織にないし」
「でも彼らは同じ組織でしょ。なのに連帯責任とかまるっと無視して勝手に行動するなんて……」
「う、それを言われると困る」
外とのコミュニケーションが少なく、特殊な事情があるプルシリーズにとって理解できないことは多々あるため、捕虜の扱いに苦慮している。
自分達なら捕虜になった場合、こんなに大人数なら共鳴で連絡しあって足並みを揃えて脱走を計画するか、救助を待つ間大人しく従うかのどちらかしか選択しない。
勝手な行動をするにしてもそれは姉妹の危機があってこそで、現状彼らには危害を加えていないのだからその必要もない……とプルシリーズは教育された思考で同じような結論に至るため、捕虜達の感情はわかっても理解はできないでいた。
「むー。アレン父さんが教えてくれたらもっとスマートに問題解決するのに……」
「訓練の一環なんだから仕方ないでしょ。それにアレンパパは忙しいんだよ」
「わかってるけど~、気持ち悪い思念波が一杯で疲れるんだよ~」
「まぁわかるけどね」