第四百八十九話
パノプリアは元々GP03デンドロビウムを基に開発したもので、既に過去の遺物……などということがないのはコンペイトウでの戦いで上げた戦果を見れば一目瞭然だ。この世界でも存在していたというのは確認済みではあるが、私が多少整えたとはいえ、基本スペックはデンドロビウムと変わりない。なのに黎明期中にも関わらず8年前も前の兵器に負けるとは……敵ながら嘆かわしい。
とはいえ、前回の時渡りは偶発的で、次回の時渡りもそうでないとは言い切れない以上は最善を尽くすべきで、戦術兵器クラスの底上げは必須だ。
「というわけで全体的にアップデートした」
とハマーンに言ってはみたものの耐久や機動性、運動性、サイコミュなどが向上したり武装は追加したが、目新しい技術を使ったわけではない。
だからこそ短期間で開発……と言うより再設計か、が出来たのだ。(ついつい調子に乗って別の開発をしてしまうのは悪いクセである)
「私の記憶違いでなければこのバズーカ砲は試作2号機の――」
「ああ、今回の目玉、アトミック・バズーカに使われていた核弾頭だ。これで戦術幅が広がるだろう」
「これは既に戦術じゃなくて戦略だ。しかもパノプリア1機に2発も持たせるなんて――」
「3発はさすがに機体が保たないから控えめに――」
「控えてない!2発で十分だよ?!だって母艦級には2機配備されるんでしょ!!」
「そうだな。ついでに言えば核弾頭の管理はMD艦ではできないのでコロニーか母艦級、アッティスで管理しなければならないがな」
核兵器は作ることよりも維持と使用後の処理が面倒な兵器だ。まぁ私達は使用後の処理は気にしなくてもいいだろうが管理が面倒なのはずっと付き纏う事柄だけに、生産数も制限する必要がある。
無駄に資源を消費する選択はない。
「ハマーンはどうだ。アッティスは扱えそうか」
「なんとかって感じね。ただ巡航は問題ないけど、テンタクルとか長距離メガ粒子砲なんて使える自信はないわ。もう少し時間がほしいわね」
「当面はプルシリーズで対応できる程度の戦闘しか起こらない予定だから問題ない。ゆっくり訓練するといい」
「それはそれで気に入らないわね」
どうやら私の発言が自分は必要ないと言っているように聞こえ、機嫌を損ねたようだ。
やはりニュータイプが分かり合える存在などというものはオールドタイプが見た夢物語に過ぎないのだ。むしろ古代の格言(?)である女の心と秋の空の方がよほど現実を語っている。なぜなら発した言葉だけでなく、そういう意図が含まれないという感情まで読み取った上で機嫌を損ねたのだから。
「慰めはせん。ただ、期待している」
「……アレンに期待されちゃったら頑張るしかないわね!」
言葉一つで損ねたものは言葉一つで満たすことができるようだ。