第四百九十二話
ジャミトフとその側近をMDが手で掴み、遠距離であるためアレンが直々に操って大気圏駐屯部隊と合流してプル達の修学旅行はすぐに始まった。
ちなみにそのMDの移動速度はとても生身の人間が耐えられないものでジャミトフ達は自分達がアレンに魔改造されていると改めて実感した出来事だったのは余談である。
「地球ってどんなところだろって思ってたけど……すっごい埃っぽいね!」
「空気に匂いがあるって不思議だ」
コロニーでは常に空気は浄化されているが、ミソロギアはアレンのこだわりによって一際その傾向が強い。工業区画が他のコロニーの居住区画よりも清浄であるといえばそのこだわりがわかるだろう。ちなみに1番空気が悪い場所はMSのコクピットの中だが、それでもスペースノイドから言わせれば。
そのため地球という環境はプル達にとって居心地がいい環境だとは言えないでいた。
ちなみに現在はガルダ級に乗っている状態なので普通なら感じるようなものではない。
「おおー、あれが高層アパートメント。情報では知っていたけど、あんなに高くして意味あるのかな」
「あれだよ。歴史で勉強したでしょ。人口が多くなり過ぎて農業プラントみたいにしないと住む場所がなくなっちゃったんだよ」
「えー、でもそこら中にスペースあるっぽいのに」
「そう言って次から次へと地球を破壊していくのが人間なのだ」
「あ、お爺ちゃん」
「ジャミトフさん」
「人間というのはどこまでも見通しが甘いものなのだ。森林伐採、海洋汚染、地球温暖化……それが悪であるとわかっていながら人間は富を求め、不便さを受け入れようとせん」
「あー、そうだね。私もサイコミュの無い生活なんてできないもん」
「それはやばい。サイコミュなかったらゴミ捨てとか洗濯とか全部自分でやらなきゃじゃん。ムリムリ」
「時渡りしてきた時大変だったもんねー」
ミソロギアでは生活基盤がサイコミュになっているために時渡り時のサイコミュが軒並みオーバーヒートしたことで短期間とはいえ慣れない生活を強いられることになったのは記憶に刻まれている。
「私はそれを変えたかった。地球にしがみつくには人間が増え過ぎ、愚か過ぎたからな」
「難しい話だね」
「私達じゃ想像しかできないよ」
環境が特殊過ぎるプル達にとって遠い国の話にしか感じない。それはスペースノイドも同じだったのだろう。だからこそコロニー落としなんていう一歩間違えれば地球連邦どころか地球を終わらせるような作戦を行うことができたのだ。
「そういえば今ってどこに向かってるの?さっきはストーンヘンジってなんにもない場所だったけど」
「次はユーコン川で川下りをする予定だ」
「川下りか~、楽しいのかな」
「3日掛けて下り、途中でキャンプもする予定だ」
「キャンプ!」
「バーベキュー!」
「テント!」
「花火!」
「派手に核でも打ち上げちゃう?」
「核装備なんて持ってきてないよ」
冗談とわかっているが、実際にできないことはないのでジャミトフは笑うことができなかった。