第五百話
「中抜きという存在は知っていたが、改めてこう見ると大きなものだな」
今までミソロギアの主要産業は交易と医療、そして私の発明品だった。
交易と言っても闇市場を運営することがほとんどだった……いや、そういえば資金洗浄自販機では中抜きに近いことをしていたな。まぁあれはあまりにも手間が少なすぎるので例外中の例外だろうが。
それ以外の取引だとネオ・ジオンにいたハマーンや不死鳥の会員などで、自分達で手に入れていた資源といえばデブリ回収ぐらいだ。
買っていた資源を直接採掘して、第1回目の宇宙への打ち上げが終了して母艦級内部で精錬して収支を計算した結果――
「10分の1以下の価格になるとはな。精錬を地上で行えばもっと下がるな」
どの程度まで投資をするか検討するために地上に精錬設備を設置せずに、鉱石という効率最悪の状態で宇宙に打ち上げたが、どうやら精錬設備を設置したとしても短期回収ができそうだ。
試算では半月も維持できれば元が取れると出ている――が――
「まぁ連邦の邪魔が入らなければ、だが」
違法採掘である以上、察知されれば連邦が逮捕に動く……かはネオ・ジオンの関係、私達の戦力を警戒して執行してくるかどうかわからないが、気に入らないと妨害行為ぐらいはしてくる可能性がある。
今は修学旅行のために母艦級3隻が停留しているが、通常編成である2隻になった時に好機と見てちょっかいを掛けてくる可能性が――野良猫が初見で懐くぐらいの確率であるかもしれない。
「効率だけ考えれば軌道エレベーターを開発したいところだが……まぁ非現実的過ぎることはおいておくとして資源はこれで目処が立った。次にやることは……戦力の充実か」
時渡りをすることを前提に準備をするなら母艦級とMDはともかくとしてキュベレイ・ストラティオティスの後継機や指揮官専用機、上位ナンバー専用機は最低でも作らないといけないだろう。
特に上位ナンバーはキュベレイ・ストラティオティスの性能に不満の声が止まらなくなってきている。
スキルが向上しているという側面もあるが、廃番としたキュベレイ・ストラティオティスIIはオプションを多く用意して個々に合わせてチューンしていたから余計に不満に感じるのだろう。
一応構想は練ってあるが……技術の方が追いついていない。
特に今回力を入れているのはビームシールドだ。
Iフィールドを搭載していることで大型化を免れなかったが、ビームシールドを防御の要としてIフィールドを除けることができたなら機動性、運動性が飛躍的に伸びるだろう。ただし、カバーができる範囲が限られていることやビームであるために目立つというデメリットも有るが……試作機として2、3機を用意する必要があるな。