第五百二話
「よし、とりあえず形になったな」
ビームシールドという名付けたことで先入観を自分で自分に植え付けていたと反省している。
「見た目はちょっとふっくらしたかな?って程度だけど、これで新しい防御機構が備わったの?」
「確かにあまり変化したようには見えませんね」
ハマーンとイリアが試作機を眺めてつぶやく。
どうやらデザインに問題はないようで安心だ。
「ああ。装甲を中空装甲にして中にビームシールドを展開することで視覚も熱源も隠蔽することでステルス性を保つと同時にビームシールドの防御性能を実現。呼称は中光装甲とした」
「装甲の中にビームって……アレンが作ったんだから大丈夫なのはわかってるけど怖いわね」
わからなくはない。
本来攻撃用途に使われるビームが装甲を挟んで向こう側に常時存在するというのは見えなくとも不安になっても不思議ではない。それが自身を守るものであっても。
実際内側の装甲にIフィールドを纏わせ、更に内側にはビームコーティングを施して備えているが……実験結果次第では更に改良が必要となるか。
「それならMSじゃなくてMDにしたら良かったんじゃない?」
「…………そうだな」
キュベレイ・ストラティオティスの後継機を作ることばかり意識していたからそのままキュベレイ・ストラティオティスを土台として作り上げたが、冷静に考えればMDで試験運用すべきだった。
「とりあえずMD化するか」
幸いMDのコアユニットはキュベレイ・ストラティオティスのコクピットと多少手間が掛かるが互換がある。設計が全て私がしている功を奏したな。
というか――
「むしろMDにこそ適している気がするな」
MDは使い捨てることを前提として耐久性を最小限に、レナスやシルメリアという汎用タイプはプルシリーズのファンネル操作の能力の平均値で操縦できる運動性と機動性を、高機動型はファンネル操作が得意なプルシリーズに合わせて向上させていたものだ。
故にIフィールド発生装置のような高コストな装備を標準とするのはとてもではないが資源が足りない。更にはMDが大型化してしまい、いい加減遅延がある関係で操縦に難があるというのに更に運動性を殺すことになるため不採用としていた。
しかし、この中光装甲は同じIフィールド発生装置という名前であってもビームを防ぐためのIフィールド発生装置ではなく、ビームサーベルから派生したものでそのコストは大したものではない。もっとも全装甲に対象としているため数が必要であるため完璧に無視ができるものではないが、言った通りレナスやシルメリアは耐久性や防御性能を犠牲にしているため、この時代のマシンガン程度でも3、4発受ければ最低で中破、悪ければ撃破される。ビームならお察しだ。
それがビームを受けても小破、しかも表の装甲が破られるからであって機体性能的には実質無傷に等しいものに変わるのだから多少の運動性能を犠牲にしても採用する価値がある。
「更にビームシールドそのものも装備させれば更に強固になるか……まぁこれはキュベレイ・ストラティオティスにも言えることだが」
しかし、プルシリーズは今まで盾を使ったことがない……というよりもミソロギアにそのノウハウが全くないな。そもそも実弾は受けるようなやつは再教育だし、回避に不安があるビームはIフィールドで受け流せるのだからそもそも必要性を感じなかった。
「盾といえば連邦よね。ネオ・ジオンにもあったにはあったけど……」
「自分の技量を過信が過ぎてシールドを使わないパイロットが多数いましたからね」
せっかく用意しても使わなければ意味がないわよね。とため息を漏らすハマーンと全くです。同意して同じようにため息を漏らすイリア。
「改めて考えるとよく戦い続けれたな。ネオ・ジオン」
「アレン様々でしょ。この世界のネオ・ジオンを見て確信したわ」
「そうですね。私達だけではこの世界と同じ道を歩んでいたでしょう」
「過大評価だ……と言いたいところだが、私が居ない世界がこのような形になっているのだから否定しにくいな」