第五百三話
「防御力が上がっているのはわかるんだけど……微妙ね」
早速試作機の防御性能テストを行った結果を見たハマーンの第一声がこれだった。
「確かに防げているみたいだけど、外側の装甲が壊れちゃうのは格好が良くない」
言っていることはわかる。
今までIフィールドで無傷だったものが破られることが前提とはいえ傷付いてしまうのだから劣化したように見られても仕方ない。
私も今まで問題なかった攻撃で不様に傷つく作品に思いが無いわけではない。
「しかし、それを目を瞑っても十分なメリットがある」
まず以前にも言った通りIフィールド発生装置を取り除いた重量軽減、そしてIフィールドを展開しない分だけ余剰エネルギーが生まれる。それはつまり、ジェネレータのグレードダウンさせて生産性を上げたり小型化するなり、メガ粒子砲の出力を上げたり新たに増設するなり、推進剤タンクを増設させて継戦能力を伸ばすなり、ファンネルを増やすなり、スラスターやブースターを増やして更に運動性能や機動性能を上げるなりと選択する余裕ができる。
「でも戦闘中に無傷で戦い続けたことは敵にプレッシャーを与えてたと思うのよ。私達からしたら予定の範囲の破損でも敵にとってはダメージを負っているようにしか見えない。だから――」
「油断するならいいが、場合によっては士気向上へと繋がる、か」
「ええ、前の世界での戦いでは間違いなく、敵の心をへし折っていたはずよ。いくら攻撃しても通じないMSなんて怖くて仕方ないわよ」
確かに精神を攻めるのも大事だ。だからこそドッペルゲンガーシステムなんてものを作ったぐらいだ。
ハマーンの意見を取り入れる方針で行くとするなら――
「多重ビームシールドか?しかし、互いが干渉し合うか?となると――やはりファンネルか」
シールドビット……いや、MS用にするならνガンダムが使っていたフィンファンネルが張っていたIフィールドのように連携して展開させるか?いや、機体を覆うよりもシールドビットのようにそれそのものに防御機構を備えさせて盾とするか?どちらがいいかな……今のところシールドビットに軍配が上がっている。
フィンファンネルも悪くはない発想だが、問題はフィンファンネルそのものを狙ってしまえばそれほど苦もなく破壊出来てしまうことだ。
相手が通常のMSであってもバルカンや拡散メガ粒子砲など連射性が優れている攻撃や面攻撃に強くない上に、相手がファンネルを装備していた場合、ファンネル同士の消耗戦になる可能性が高いし、Iフィールドを張っているフィンファンネルが狙われれば3、4基を連携している関係で行動が縛られているので一方的に破壊される可能性が高くなる。
その点、シールドビットのようにその名の通りに盾として運用するならフィンファンネルと違って単機で動かすことができる。
「ビームシールドを展開するファンネルと中光装甲の2段構えならそう簡単には遅れを取ることはないだろう」