第五百五話
「ようこそ、ミソロギアへ」
そう言って出迎えたのはこの世界のジュドー・アーシタ御一行である。
大気圏駐屯中の母艦級1隻分のプルシリーズが地球体験ツアーを終え、地上の資源採掘基地の1つが軌道に乗ったことで帰還したわけだが、その母艦級に乗船して来た形だ。
「……やっぱりここにもあんたはいるのか」
さすがに2度目となっては驚きではなく呆れが先に来るらしい。
「お兄ちゃん!多分このアレンさんは本物よ」
「ほう、妹の方はなかなか察しがいいな。ニュータイプ訓練の成果が出ているようで何よりだ」
「……本当か?全然わかんないぞ」
妹の方は重さ以外はほぼ変わらない人形と本物の私を見抜くほどには成長しているらしい。兄の方が残念だが。
ジュドー・アーシタはニュータイプとしての素質はあるが、その能力は感情に大きく左右される。元々ニュータイプは感情に左右されやすいが、それにしても振れ幅が広く、不安定だ。だからこそリィナ・アーシタが負傷した時にハマーン閣下を圧倒するほどのプレッシャーを放てたし、たかがゴミ拾いをしていた少年でここまで戦い続けれたのは戦闘で感情が高ぶり、ニュータイプ能力が発揮されたことが大きいだろう。
それに比べてリィナ・アーシタは感情の揺れで能力が左右されない代わりに平時ではジュドー・アーシタよりも優れている。その反面、ジュドー・アーシタが上向いている時と比べると大きく劣ってしまう。
それにしても多少教育した程度では言動も変わらないな。もっと厳しく調教すべきか?
「っ」
私の思考を読み取ったのかジュドー・アーシタが身体をビクンッと跳ねる。どうやら同意を得れたようだしスケジュールを組んでおくとしよう。
それはそうと――――
「ハァ」
ついため息が漏れてしまう。
なぜかと言うと――
「お、本当に昔の俺とリィナがいるな!」
「兄さん?!アレンさんに呼ばれてからって話だったでしょ?!」
私達の世界のジュドー・アーシタとリィナ・アーシタが無断で入ってきたからだ。
いや、リィナ・アーシタは止めようとした結果なのでいいのだが、ジュドー・アーシタ……お前ももう落ち着いていい年齢だと思うんだが……やはり教育は早い内にしておく必要だな。
まぁジュドー・アーシタ達も若返らせ続けるからそのうち覚えるだろう。
「ゲッ、老けた俺とリィナがいる」
「お兄ちゃん?!」
ハァ……まぁこの世界のジュドー・アーシタも所詮ジュドー・アーシタということか。これから修正ができることを祈ろう。神にではなく、未来の私に。
「……へぇ、随分と若い時の兄さんはお口が汚いようですね」
声に重さがあるとしたら随分と重量を感じるその言葉と共にプレッシャーが漏れ出る。
犯人は……私達の世界のリィナ・アーシタだ。
まぁ兵士として育て上げたプルシリーズですら年齢のことをギャンギャン騒ぐのだからまだ一般人に近い感性が強いリィナ・アーシタにとって許される発言ではないだろう。
「ちょっとお話、致しましょうか」