第五百六話
ここにあるとわかっている特大な地雷を自ら踏み抜いた片割れと簡単な言いつけが守れなかった片割れ、ダブルジュドーはダブルリィナに正座(無重力だから意味など無いポーズだけのものだが)をさせて説教されている。
この光景を見るとこの世界のジュドー・アーシタの矯正は未来の私でも難しいかもしれないと思ってしまったのは無理のないことだと思う。
前の世界のジュドー・アーシタは興奮状態でなければもう少しだけ落ち着いているから今回は見逃して特別訓練で許してやろう。
「ハァ……こっちに来ていいぞ」
「はーい。わ、本当に私とそっくりだ」
「本当だ。私とそっくりだ」
呼んだのは待機しているように指示したプル……この場合のプルとはオリジナルのプルである。つまりこの場にいるこの世界のプルと同一存在であるわけだ。
「なんか変な感じだね」
「うん。変な感じ。他の子達はそうでもないのに……」
おや、可能性の1つとして予想はしていたが、どうやら同一存在と遺伝子的には同じはずのクローンとでは違いがあるようだ。
ニュータイプ同士の同一存在はハマーンでデータ取りをしたが、ハマーンのクローンは存在しないためにクローンだとどういう違いがあるかわからなかったが、どうやら遺伝子情報ではなく、他の別の何かで自分だとわかる。これは興味深い……興味深いが、時渡りを行うとしてまた同じ時代ならともかく、遙か未来や遙か過去、もしくは別世界レベルで違う場合は役に立たない可能性が高いがな。いや、同じ時代でも同じか?……いや、完璧なクローンを作り出すことを目指すというのもあり、か?
ところで肩から下げている妙に背が高いクーラーボックスはなんだ。
「あ、これ、一緒に食べようと思って持ってきたんだー。好みも一緒だと思ったから」
「わーい!ありがとー!」
クーラーボックスからいそいそとうず高く積み上げられたパフェが2つ……いや、もうほとんどアイスではないか?カップの中からはみ出した部分の大半はアイスだぞ。一応おまけ程度にチョコレートや生クリームは掛かっているが。
それはともかく、この2人の関係はうまくいきそうだ。
「――あれ?そういやなんでプル達は老けて――「お兄ちゃん?」――成長してないんだ?今より未来から来たんだろ?」
「ああ、上位メンバーは途中で若返っているからな」
「若返るほど年を取ってるのか?」
その理由が…………非常に不愉快でありながら面映ゆいものではあるが、身長のことを気にしている私を気遣ってのことと一緒に並んで歩きたいらしい。
……まぁ確かに隣を歩く相手が見上げないといけないのは毎回不愉快な気持ちになるからな。
ちなみに中位ナンバー以降の7割は普通に成長している。そのため、容姿の年齢は逆転している場合がほとんどだ。
更に言えば私を子供扱いする猛者もいたりする。もちろんそれ相応の報い……私からだけでなく、上位ナンバーからも受けることになった。……のだが、それでも懲りずに子供扱いしてくるので寝ている間に130cmまで縮めてようやく静かになったが、最後に「大人げない!」って言っていたが子供扱いしていたのだから大人ではないのだから問題ないだろう。
プルシリーズにもこのように跳ねっ返りが偶に存在することがある。