第五百十八話
「ジオン残党は本当に多いな」
前の世界で海賊狩りをしていたが、海賊の半分はジオン残党だった。そしてそれだけ刈り取っても潜伏していた。
まぁ管轄外なら見過ごしていたからもあったが、本当に多い。
そんな私達がいないこの世界では更に多い。
どうやら前の世界ではデラーズ・フリートはアクシズに吸収したが、この世界のデラーズ・フリートはアクシズに一時避難したに過ぎず、一部吸収したようだが多くは離脱した。あの頃のアクシズなら人口が多すぎて一時的ならともかく、全てを抱えることは不可能だろう。私がいないのだから当然だな。
前の世界でも私がいなければデラーズ・フリートを受け入れることはできなかっただろう。
つまり、デラーズ・フリートの生き残りの分だけ残党が増えているということだ。
「そしてコロニー落としを敢行しようとする過激派に集まっているわけだが……主謀はグレミー・トトか。シャア……フル・フロンタルが言っていた通りか」
ハマーン閣下の傲慢というか、怠慢というか、未来の情報を得ながらも結局は防げなかったな。
人材不足に、不穏分子の把握という目的があったのだろうが、結局反乱させては意味がない。付けていた監視やハマーン派の兵士が始末されて余計に人材を消費してしまうという結果になった。
気持ちはわからないではないが損切りのタイミングを見誤ったな。
「しかし、ギレン・ザビの子にしてザビ家の真の継承者、か」
人間というのはどこまでも言う事も為す事も同じか。
そう嘯く者も、その大義を信じたわけでもないというのにそれを利用しようとする者達も。
そしてそれを信じて集う者……エギーユ・デラーズほどギレン・ザビに厚い忠誠を誓った者ばかりではなく、新しい旗頭を求めたデラーズ・フリート残党は多い。
合流せずにゲリラとなられるよりはいいがな。
「さて、こちらから戦力を出すのはいいが……」
問題はビームシールドを実戦投入するか否か。
情報漏洩の観点から言えば出すべきではない、だが実戦データが欲しいと思ってしまうのも事実。
「ファ・ユイリィの返事を聞くまで本気は出したくないが難しいか?」
結局考えさせてくれと保留になってしまったが、近い内に結論を出すと言ったのでその結論が出るまではコロニー落としの不安と緊張を与えてこちらに傾くような状態にしておきたい。一応人形で軽くカミーユ・ビダンの診察したデータはあるがやはり十全な設備でデータ取りしたいところだ。
カミーユ・ビダンの現状はニュータイプの新たな可能性を秘めている。精神の変化によってどれほどの変化を齎されか、期待だな。