第五百二十話
地球から運び込まれる資源を格納したり、2基目のコロニーの修繕・改装を施し、コンペイトウのさらなる要塞化を進めたり、ビームシールドを装備しないレナスを量産したり、修学旅行の成果を精査したりしていたところ知らせが入ってきた。
「ハァ、やはりか」
ハマーン閣下が討伐に動く前に反乱軍が行動に出たようだ。
前哨戦など存在しないとばかりに廃棄コロニーの1つが動き出した。つまり、どストレートにコロニー落としを開始したわけだ。
そしてここに来てやっとハマーン閣下が……正確に言えばネオ・ジオンが……焦り、意思統一が果たされ、急ピッチに出兵の準備が行われている。予定では明日には終わるらしい。尻に火がつかないとまとまらないあたりが組織として未熟さを感じる。
実はまとまりに罅を入れたのは私達だったりするらしいがな。
ネオ・ジオン軍の中での私達の存在はハマーン閣下の直属部隊と見ている者が多く、今の今までこれほどの部隊を隠していたということに不満を感じていて、拗ねてしまっているようだ。子供かっ。
「しかし連邦軍は動かないのか」
ネオ・ジオンとの協定の結果なのかは知らないがこのコロニー落としを防ごうという動きが全くない。
そんなに反乱軍が信用できるのか?それともネオ・ジオン軍の強さを信用しているのか?……まぁどちらでもないだろう。さすがにそれほど楽観視しているはずはない。
「となると何か切り札があるだろうが……ソーラ・システムか?」
1番に思いつくのはやはり唯一私が緊急で対応しなくてはならなくなった、この世界へと訪れる切っ掛けになった兵器である。
未来の知識とアムロ・レイをモルモットとしたニュータイプ技術の進歩によって軍事力に自信を取り戻してつつある。にも関わらず指を咥えて無抵抗にやられるわけがない。
事実、エゥーゴやカラバまで動きがないというのは何か対策を取っているということだろう。そして軍を準備少なくコロニー落としを防ぐ手段などそう多くはない、つまり有力なのがソーラ・システムだとあたりを付けたわけだ。
「……いや、そういえばコロニー落としの作戦概要では地球連邦への打撃ではなく、武威を知らしめて心を折るために被害を最小限に抑えたコロニー落としという奇妙な内容だったな。もしかしてそれだと想定しているのか?」
にしても主導するのがハマーン閣下ならともかく、過激派なのだからそんな加減をするなどという間抜けな考えはしないとはずだが……実際過激派にその意志は全くない。
ハァ、地球連邦の方針を探るのは面倒だ。
今の地球連邦はまとめ役が存在しないせいで特定の人物の思考を読んだところで動きがわかるわけではないからだ。
意思決定権がはっきりしないというのはニュータイプ対策には優れているといえる。そんなつもりはないだろうが。