第五百二十一話
「此度の協力感謝する」
今いるのはネオ・ジオン軍は本拠地としているサイド3を出陣して移動するコロニーに向かっている最中の旗艦である新型戦艦・レウルーラに構えているハマーン閣下の自室で、感謝を述べているのも同上だ。
「対価をもらってのこと、気にしないでいい」
派遣するのは母艦級1隻ではあるが、前にも言ったが母艦級の最低限の護衛以外はレナスのみなので対価は安くしている。後、プル達の危険手当分も。
この戦艦レウルーラは未来のシャアが提供した設計図から再現したようだ。
前の世界にはなかった戦艦だ。
どうやら未来のシャアの世界では……いや、この世界でも、だがアナハイム・エレクトロニクスがMSや戦艦などを握っていて、レウルーラもアナハイムが設計から建造まで行ったそうだ。
そのため、中身は連邦で長期的に主力艦と定められていたアイリッシュ級に近いものとなっているようだ。
ちなみに対価としてこのレウルーラの設計図も含まれている……新たな旗艦の情報を売っていいのか、という疑問はあるが私が考えることではないのでもらっておくが。
とは言っても、そもそもアナハイムの技術は一年戦争終了後にジオニック社を吸収したことで、戦艦そのもののノウハウを連邦から、MS運用ノウハウをジオンを盛り込んだものがアイリッシュ級、その素であるアーガマに当たるのでどちらにしてもジオン系の技術は使われてはいるんだがな。
それにしてもムサイ級と同程度にサイズで戦艦というのは斬新だ。
「しかし私達が行うのはこの艦の護衛でいいのか?ハマーン閣下もMSで出るんだろう?レナスを何機か随伴させてもいいが」
本当に指揮官が前線に出る風習は直した方がいいと思う。
「構わん。既にキュベレイの改修に技術協力をしてもらっているのだからこれ以上は、な」
ハマーン閣下のキュベレイは既に時代遅れだったため新しいMSを開発……なぜか私がデザインしたものと同じデザインのクィン・マンサが開発されていたが、ニュータイプ研究所のほとんどは反乱軍に流れてしまい、そのクィン・マンサも同じように流れてしまった。
そうなるとハマーン閣下は旧式のキュベレイでそのクィン・マンサ、それもこの世界のプルシリーズが操るとなると幾ら劣化していたとしても厳しいと踏んで以前渡したものより踏み込んだものを譲渡した。
更に進化してくれれば損はない……のだが、いつ回収できるかは私でも予測できない。なにせネオ・ジオンには知っている技術者がほとんどいないからだ……もっとも前の世界でも名前は覚えていても知っていると言えるほどの知り合いはスミレ以外にはナナイ・ミゲルぐらいしかいないのだが……そういえばアクシズに到着して半年後ぐらいにジャンクから作り出した脳波測定器を奪っていた不届き者がいたな。そいつは名前すら覚えていないが。
「一応確認しておくが、反乱軍には勝てるんだな?」
「ああ、反乱軍『には』勝てるだろう」
「つまり問題はその後の連邦軍か」
「その通りだ。少ない戦力を更に少なくした我々で連邦軍に対抗できるかはわからん。奴らがどれだけ本気でこちらを潰しに来るか、それ次第と言ったところか」
「あまり明るい未来が見えない話だな。なんだったら私達のところに亡命するか?シャア……フル・フロンタルも匿っているシャアもミネバ・ラオ・ザビも歓迎するが」
「フッ、いざとなったらそれもいいかもしれん」
そのセリフを言ったやつはだいたい提示した選択肢を選ばない。