第五百三十三話
「……ニュータイプ部隊を投入する」
グレミーは覚悟を決めて命令を発する。
ハマーンを予定ほど消耗させられていないのだが、キャラ・スーンの登場で包囲網が瓦解の兆しが見えたことでチャンスは逃すまいと決断したのだ。
「全機をハマーンに集中させろ。ハマーンさえ討てば後は烏合の衆だ。今ハマーンを包囲している部隊はあの腰巾着共に当てろ」
本来ニュータイプ部隊……プルシリーズは集中運用するようなものではない。
連携はするが数がせっかくのファンネルによる数の優位を集中させてしまえばその強みを活かしきれない。だが、相手はハマーンである。
下手な数で対応してしまえば、各個撃破されてしまうのはオールドタイプもニュータイプも関係しない現実だ。
だからこそ無駄に思えるニュータイプの集中投入である。
「プルツーに繋げろ」
「ハッ」
通信士の返答から数秒でプルツーの姿がミノフスキー粒子で乱れが生じながらもモニターに映し出された。
「御用でしょうか。グレミー様」
「クィン・マンサの調子はどうだ」
「良好です。いつでもハマーンの首を取ってご覧に入れます」
「頼もしい限りだ……プルツー。お前は周りの被害など考えず、ハマーンを討つことのみを考えろ」
「了解しました」
味方の被害……つまり姉妹がやられそうになっていたとしても、そして機会があったなら姉妹ごとハマーンを始末しろということである。
大事な手駒ではあるが、ハマーンはそれ以上の価値があるのだから多少の被害が出ようとも討つことを優先ということだ。
プルシリーズ同士は本当の姉妹のような関係ではないが、良好な関係なため、実戦では相手を殺すことより味方をフォローしてしまうだろう。それは通常の戦闘では問題ないが、ハマーンのような重要人物が相手では話が変わる。
何よりもハマーンを討つことが優先され、なんだったら自爆も視野に入れられている。
そのため、切り札中の切り札であるクィン・マンサに乗るプルツーのみ特別に声を掛けた。
「フル・フロンタルも合流するだろうが他に任せ、お前は――」
「ハマーンを討ちます」
「よろしい。吉報を待っているぞ」
「お任せください」