第五百三十四話
「さすがにこれは緊張するな」
クィン・マンサを中心に据え、自身の乗るキュベレイとそっくりなキュベレイ量産型、ブサイクでこれには乗りたくないな、なぜ自分の名前が由来に使われているのか開発者に正座させて何時間か問い質したい気持ちになったハンマ・ハンマが群れて向かってきているのを確認してつぶやく。
指揮官としてはとても声にできない思いがコクピットでは独りであるため、抵抗なく本音が漏れる。
「どこまで戦えるか」
死ぬ気はない。
だが、無謀とも言える戦力が目前に迫ってきている。
その数はクィン・マンサ1機、キュベレイ量産型が25、ハンマ・ハンマ30機と大部隊だ。
普通なら、エースだとしても撤退を選択する戦力だ。相手がニュータイプ部隊であることがわかっているならなおさら。
しかし、ハマーンは退く気はなかった。
「あれらは私以外が相手するには荷が重かろう」
フル・フロンタルがいたなら心強いが、あちらはあちらで多忙なようだからな。と戦う気配を感じ取ってため息を漏らす。
「技術は相変わらず未熟なようだが……身体能力と連携が厄介だな」
反乱が起こる前にプルシリーズの視察したことがあり、その時とあまり変わらない拙い動きではあるが、プルシリーズの強みは人工的に作られた身体能力と戦闘用の駒として訓練された連携にある。
もちろんミソロギアのプルシリーズには全体的に劣るが、組織的連携としてはネオ・ジオンのプルシリーズが優れている部分が存在する。
ミソロギアのプルシリーズはニュータイプの共鳴による連携が可能ではあるが、その能力の高さ故に個人プレーが多い。反対にネオ・ジオンは完全な軍属で兵士としての教練を受けているため、組織的連携という面では優れているのだ。
「フフフッ、これは本格的に指導者失格か?自分がどこまでやれるか試したくなっている」
アレンによるニュータイプ訓練は座禅のようなものであり、そしてそれはハマーンに向いている訓練だった。
指導者というのはストレスが溜まるが、この訓練で発散することができるようで訓練としてではなく、ストレス解消が主目的となって取り組んだことでニュータイプとしてレベルアップを果たしていた。
更には過去に大きく囚われたハマーンだったが、シャア……厳密には別の世界のシャアだが……が自分を頼ってくれたことも合わさり、精神に随分と余裕が生まれたことで――
「さあ、掛かってくるがいい。叩き伏せてやろう」
なぜかめちゃくちゃ好戦的になってしまっていた。
日頃は特に変わりなく、指導者然としているがコクピットに入り、戦闘状態に入ると少しずつ興奮状態に陥り、それはキャラ・スーンのそれと酷似していた。