第五百三十五話
「「「ファンネルッ!」」」
示し合わせたわけではない、そう訓練されていたから自然と量産型キュベレイから一斉にファンネルが放出される。
数は100を超え、それを前にすれば部隊単位であっても甚大な被害を齎すというのにハマーンの乗るキュベレイ相手とはいえ、たかが1機に度が過ぎているようにしか見えない――が――
「視えるッ!ファンネルッ!!」
包囲に動くプルシリーズのファンネルを見切り、乱雑に動く中から1方向に移動するファンネルのみを周囲に展開したファンネルで撃ち落とし、格納する。
結果、包囲を構築する頃には穴が空いてしまい、そこからハマーンは包囲を脱する――プルシリーズへと向かって。
「数の暴力でどうにかなるのならば連邦はジオンに苦戦などしない」
包囲を抜け出すとファンネルは後方へと置き去りとなる。
「貴様達は乱戦の中でファンネルが使えるかな?」
ファンネルに識別コードやシルエット認証どという高性能な判別機能は搭載されていない。そもそもそんなものが搭載でき、ミノフスキー粒子下で有効ならMSはもっと廃れている。
つまり、ファンネル同士の把握は操縦者が行わなければならない。広い宇宙、小さいファンネルことから通常の戦闘なら問題はない。しかし、今は通常とは違った運用をしていることで障害が生まれる。
これだけの数を揃えて目標が1機などということはありえない。
そして兵士としてまだ経験が浅いプルシリーズがそんな不慣れな状況を臨機応変に対応できるわけもなく、ファンネルとMSを同時に操作するとなると精度が落ちる。
それを知っているのはハマーンだけではない。
ハンマ・ハンマに乗るプルシリーズが盾となるべく進み出る。
「甘いわ!」
ほぼ乱戦となった現状ではハンマ・ハンマの最大の特徴である有線アームは有線である以上ファンネルよりも使いづらくなる。
そうなるとハンマ・ハンマは射撃精度が高く、重火力なただのMSへと変貌する。
「フンッ、その程度か」
瞬く間に1機のハンマ・ハンマに肉薄し、サーベルをコクピットへ突き立てようとするが身体能力の高いプルシリーズは回避しようと動くが、最初からそれはフェイクで、手を返してハンマ・ハンマの右肩を斬り裂き、バランスを崩したところで胴を切断――しようとしたが別のハンマ・ハンマが割って入り、シールドのメガ粒子砲を放つが、ハマーンは宙返りするように躱し、途中でファンネルを射出してそのハンマ・ハンマを蜂の巣にして爆散させた。
プルシリーズとは逆にハマーンは味方がいないことが有利に働いている。
意思があるものが全て敵であるため、気配を識別する必要性がなく、判断する思考すらも挟まず、タイムラグが短くなり――
「フフフッ、視えるぞ。感じるぞ。この全能感、病みつきになりそうだ」
プルシリーズの動きが、意思が、手に取るようにわかることに興奮が加速する。
「動揺しているか。さすがに駒として訓練されていたとて感情はなくなりはしないか。しかし、その揺らぎが命取りとなるのだが……その教訓は貴様達の命で学ぶがいい」