第五百三十八話
「そろそろ限界か」
ハマーンは深く息を吐いた。
戦い疲れ、エネルギーも尽き、キュベレイもボロボロ……なわけではない。
「さすがに学習されたか」
今まで高機動を活かし、量産型キュベレイやハンマ・ハンマを盾にしていた防いでいたが、その鬼ごっこも終わる時が来た。
「できればフロンタルがこちらに来るまで時間を稼ぎたかったが……意外と不甲斐ないと言うべきか、それとも反乱軍が予想外に手強いと言うべきか」
愚痴を漏らすのは目の前にいる緑の巨体が放つプレッシャーゆえか、それか余裕の表れか、それともただ単に心情が漏れただけか。
「追いかけっこはここまでだな」
「クィン・マンサか。機体性能だけで考えれば勝てる道理はないが……MSの性能が決定的な差ではないということを教えてやろう」
「随分と改修したようだけど、このクィン・マンサに勝てるものか!」
現状はハマーンとプルツーの一騎打ちをするような形となった。
他の者達がいるとハマーンに利用されることを察して距離を取らせた結果である。
「喰らえっ!」
挨拶代わりにと胸部から拡散したメガ粒子が放たれる、がそれでやられるようなハマーンならプルシリーズも苦労はせず、キュベレイはまるで同じ極同士を近づけた磁石の反発のように躱していく。
しかし、その姿には余裕がなかった。
「くぅっ!」
自身の能力的にキュベレイの性能的にも問題はない。
だが、肉体的には問題があった。
プルシリーズのように身体を強化されているわけではないハマーンは肉体そのものは通常の人間の範疇である。
もちろん対G装置や装備は整えられているが、それを上回る回避行動をハマーンは強いられていた。
「こうなることが、わかっていから、もう少し数を減らしたかったのだがなっ!」
クィン・マンサの攻撃だけなら余裕があるのだが、問題は量産型キュベレイとハンマ・ハンマに包囲されているということだ。
回避先に置くようにファンネルや有線式アームが待ち構え、偶にハンマ・ハンマのハイド・ボンブが流れていたりする。(余談だが、たまにハイド・ボンブは味方に当たっていたりする)
それらを全て回避するとなれば生半可な回避行動では躱しきれない。ファンネルでファンネルや有線式アームなどを迎撃することもあるが回収に少しもラグが発生するため基本は回避一択だ。
「逃げるのだけは上手いな!ハマーン!」